広く浅く

広く浅く

本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

常夏荘の人々に見守られた男の子と女の子の成長の話(なでし子物語 伊吹有喜)

なでし子物語 伊吹有喜

なでし子物語

あらすじ

母親が男と出ていき一人となった少女と

体が弱く昔からのまじないを信じる親父様に女の子の格好をさせられている男の子

を取り巻く人々の話

時は1980年、静岡の峰生に連れてこられた少女・燿子

林業と養蚕業で栄えてきた、遠藤の常夏荘へ仕えていた亡き父の父

祖父を頼ってこの地に住むことになった

連れてこられたはじめの日、燿子が出会ったのは女の子の格好をしていた立海

燿子は、着物姿でお堂に居た立海を人でない神様だと思いこむ

お堂でお菓子を食べさせられて、その味にほっとしたのか眠り込んでしまう

次に目が覚めた時には、人々に取り囲まれて何やら剣呑な雰囲気に居た

そこへ親父様があらわれ人々をたしなめ、燿子へ「おかえり」と告げたことで一族の関わり合いを認められ、常夏荘へ迎え入れられたのだった

 

感想

小学4年生にしては小柄な身体

ほぼほったらかしで、育てられた燿子

耳垢が詰まりきっていたせいで、耳からカランカランと音がして集中できずにいた

それを立海の家庭教師・青井が気付き病院で綺麗にしてもらった

というエピソード

青井の発案で立海と一緒に勉強することになったりと

燿子の身の回りが改善されていく様は読んでていて気持ちがいい

それに、学校ではグズとかいじめられているが

実際は、丁寧でゆっくりしているからだと、常夏荘での手伝いをしている様子から伺えると青いは言う

他にも、青井先生は質問をしてくる燿子に好奇心旺盛なのねなどと、語っている

物語終盤でも立海のことについて尽力しているし、とても見る目があっていい先生だと思った

 

祖父が孫について、守ってやろうという気持ちがヒシヒシと感じられるのが

学校でやかんのお湯をかぶってしまった時

いじめられているという話を燿子から聞いて、断固として学校に自分から進んで行くというまでは、行かさないと、周りの大人達に語った時は心強く

また、遠藤家のおあんさんと呼ばれる責任者が、先生が常夏荘へ家庭訪問に来て

燿子に会わせて欲しいと言われた時、目に入ってきた燿子と立海の様子を見て

頑なに断ったシーンも燿子が守られているようでほっとした

 

このおあんさんと亡き夫の、回想話は胸がキュンとするセリフが多く

特に、新婚旅行のホテルで靴をプレゼントしたときの話が好きだ

背の高さを気にしている照子へ、自信を持つように言う龍一郎

学校のクラスメイトを3つの組に分けていた龍一郎

薔薇は財力・菊は血筋・百合は美貌と才能

自身は、薔薇・菊・百合のどれでもない、撫子組だと

薔薇ではないかと言う照子に対し、体力もなく家を継げるかどうかも怪しい

たった一人の撫子組

この世で一番好きな場所は常夏荘という、龍一郎

それを受けての、照子の力強いセリフ

 

燿子の祖父が語る、七夕のお話も素敵

 

燿子と一緒に過ごすことで、少しずつたくましくなっていく立海の成長っぷりも見逃せなかった

 

シリーズ1作目、現在3作目まで出ている 

1,305冊目 なでし子物語 伊吹有喜

でした

 

3作目の記事はこちら

hiroku-asaku.hatenablog.com

 

北の大地、北海道で寮生活を送る大学生の話(緑のなかで 椰月美智子)

緑のなかで 椰月美智子

緑のなかで

 あらすじと感想の入り混じったなにか

まさに、『緑のなかで』暮らすという表現がふさわしい

緑のツタで覆われた、緑旺(りょくおう)寮で寮生活を送る大学生の啓太

 寮自体は自治寮となっており、各種委員会や部活動も盛んな様子

緑旺寮は、運営のすべてを寮生が行う自治寮となっている。部の他にも、各種委員会、有志団体、棟ごと、ブロック部屋ごとの集まりがあり、活動は多岐にわたる。

啓太は環境清掃委員会の他に、寮内の卓球部会に所属している。

緑のなかで  p14

 そのなかで、特に決まってつるむ相手は居ないようだが

ちょいちょい登場するのが、早乙女という人物

啓太の高校時代の友人である寿に似ていることや、相手が啓太を気に入っているのか、アルバイトの家庭教師の代理を頼んだり、他の用事をお願いしている場面もある

高校時代、生徒会で仲良くなった会長の寿、幼馴染の真帆、教師志望の百瀬とは今でもLINEでやり取りする仲で、度々登場する

 

啓太は寮内の卓球部会以外にも

Ambitionというオープンキャンパスなどの時に案内をする団体や

フィールドワークという名のハイキングサークルGreen Grass

へ所属している

 

後は宅配便業者で荷物の仕分けのアルバイトもしており

とにかく、活動的な啓太(自身では、真面目で消極的と思っている)

 それと同時に寮内も先程述べた、委員会や執行部やらが季節ごとにイベントを開催して、とてもにぎやかで楽しげな様子が伝わってくる

 

これだけ、色々部活にサークルに団体にと活動していたら

さぞかし大学生活が楽しかろうと思えば、自分とはなんぞやと悩んでいたりするのだった

 

他にも、双子の弟・絢太への葛藤、母親の突然の家

などに悩みながら、寮生活を続けていく

進路に関しては高校時代に、自分のなりたい職業を真帆のアドバイスもあって橋の建設に携わりたいと思い、今の大学に決めた

なので進路に関しては思い悩むこともないが、時折ふと自分という存在について考える

 

サークルのメンバーたちとの絡み、彼女を作ることに全力投球だが、小説家にもなりたという主に間島先輩との絡み

や四季折々の寮の移り変わり、寮のツタの変化

寮生の息遣いが見て取れる 

 

リアリティあふれる人生感を綴った小説がお好きの方にはおすすめ

 

1,304冊目 緑のなかで 椰月美智子

緑のなかで

緑のなかで

 

 

図書館が好き

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図書館、好きです

空間が好き

あの背の高い本棚にぎっしりと詰まっている本達

理路整然と並べられた、きちんと感

そこには、私を素敵な物語の世界に連れて行ってくれるお話達

それが何万冊とあるあの空間が好き

 

なのでちょっと、本が雑に置かれていたりすると、もやっとする

例えば、本が並んでてその上に横に置かれた本とか

本棚に入りきれないのか、書庫がいっぱいなのか溢れかえっている印象を与える

図書館の整理整頓からちょっとずれた感じが苦手だ

 

図書館に行けば大抵の本は揃うという点

蔵書の豊富さにもよりますが

分室や図書室でもはたまた市の図書館でも

他の図書館から、具体的に言えば府立や他の市

借りられるサービスというものがあるということ(図書館相互貸借)

なので、市内の図書館から借りられない場合は、図書館のスタッフに相談すると借りられたりする

市内の図書館から借りれる場合は、予約すればいい

あとは、希望の図書館に購入希望といって新しく本を入れて欲しいとリクエスト出来る場合もある

 

静かな空間

基本的に、大きな声で話したり騒いだりすることが出来ない空間になる

騒がしいと、集中して読まないと難しい本が読みにくいから

みんなが静かな空間を求めているから、静かということもあるかもしれない

だか、最近ではクラシックを静かな音量でかけたり

エントランス付近の入り口でアロマを炊いたりすることもあるらしい

リラックスのためにそういった試みをしているとすれば

前者の集中する空間といった点を作り上げているのかもしれない

 

静かな空間で落ち着いて本を探したり選んだり出来るという点で

静かな空間が好きだ

 

じゃあここで似たような空間に本屋さんはあるけども?

まず、図書館は無料で貸借出来るという点

本屋さんは、お金を支払って欲しい本を自分の持ち物に出来る場所

確かにみんなと同じ本を共有するので、図書館は自分の物にはならない

そういう点がある。だかしかし

返却期限があるから本が溢れない

ついつい買いすぎて積読したり、読み終わった本で溢れかえるという心配も要らない

なにより図書館は読みたい本が多く揃っている

本屋さんは、売れ筋の本や新刊が多く揃っていて、その著者の全ての著作を単行本で読めることが少ないと思う

それに、古典の全集や古い作品があんまり少ないイメージがある

本屋の関係者の方に言わせれば全くの見当違いなことを言っていたら

大変申し訳無いです

 

図書館はランガナタンという人が定めた原則があり

その中には

3.すべての本をその読者に

とある

かの国立国会図書館に行けば、国内で発行されてた出版物の全てを網羅する本が収集されており、同人誌までもがあるという

なので

最大の強みである図書館の蔵書数に大変強く心惹かれるものがあり

私は図書館を好きである最大の要因である 

 

都会のベランダから星空観察

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天体が好き

昔から、月とか空とかは好きでよく眺めていたり

写真に撮ったりしていたのですが

いかんせん携帯やスマホだと思うようには、天体写真が撮れず

いつも肉眼で見た風景と撮影した写真の落差にがっかりしてました

特に月を撮影するとそう思います

一眼レフを購入して撮影すれば済む話なんですが、ちょっと敷居が高く

あのゴツい物を扱う自信がありません

困っているのは、月と星を撮るときだけなのです

天体観測に双眼鏡を使ってみる

そんな時、双眼鏡を使って天体観測をするということを思いつきました

インターネットで検索してみると、どうやらそれも可能な様子

ただ、双眼鏡でも、口径が大きいサイズの方が光を集める能力が高く

要は、小さな星でも明るく見えると判断しました

あとは視界の広さですね、それは度数で表現され、大きいほど良いらしいとのことでした

実際にベランダから見てみる

今まで誤解をしていたのですが、双眼鏡ってルーペみたいな感じで

見えてるものを拡大して見れるようにするんですね

てっきり、覗けばよくある天体写真みたいに星がブワーッと見れるのかと勘違いしてました

で、結局の所ですが、見えましたよ星が

肉眼で見れるものはより大きく、見えない星も

夜空の暗さに目が慣れてくると、小さな星も見れました

時間帯による

当然ながら、いつも同じ場所に同じ星が見れるということでもなく

国立天文台の今日のほしぞらで、何時くらいにどの方角、どの星座がみれるか調べて照らし合わせてみました

今日のほしぞら - 国立天文台暦計算室

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今日のほしぞら(国立天文台

なんせ、星の知識なんてないに等しいので

今回の記事でも、この星座が見れたと言い切れないのが悲しいです

おそらく、なのですが

22時位西の空に、オリオン座があの形でみれたり

朝の6時くらい北の空に、柄杓型の北斗七星がみれたりはしました

あと、木星・金星?らしきものも、これは肉眼でも見れましたが

今日のほしぞらで見れることを知らなければ

ただの大きな星として見逃していたことでしょう

 

おわりに

都会だからといって、星空観察を諦めていましたが

双眼鏡を購入して感動しました

どうでしょう、天気の良い日には夜空を眺めてみたら

素敵な体験ができるかもしれませんよ

 

 購入した双眼鏡

Kenko 双眼鏡 New Mirage 8×42 ポロプリズム式 8倍 42口径 軽量 ブラック 103172

Kenko 双眼鏡 New Mirage 8×42 ポロプリズム式 8倍 42口径 軽量 ブラック 103172

 

 

400ページを超える、濃い物語 『彼方の友へ』ー伊吹有喜

『彼方の友へ』ー 伊吹有喜

彼方の友へ

 帯の下には

こちらの本のおもて表紙には帯があるので隠れているが

手にお持ちの方は、本の下部にうっすらと白抜き文字で描かれた

単語を読み終わってから、見てほしい

別に、読む前でも構わない

そこには「Dear friends」裏表紙の同じ箇所には「Sincerely yours」

と印字されている

これは本文中にも出てくる、非常に重要な単語である

主に意味としては、拝啓・敬具の意味を持つ

私個人はdearという親愛なるという意味が好きで

この小説で改めてその対極となるSincerelyという単語だということを知った

 

あらすじという名の

小説の時代が昭和のはじめ

戦前・戦後を生き抜いた少女がいた

大好きで大切な『乙女の友』という雑誌に携わった人々達との

一口にお仕事小説と言ったら軽々しく聞こえてしまうくらい

重々しく、熱い話

 

出版業界の編集者として、執筆者として

どうにもできない、だが

あこがれと尊敬の『乙女の友』の主筆・有賀のそばで働けるという

支えがあってこそ

小学校しか出ていないという、学力的教養的に引け目を感じながら

それでも歯を食いしばって

『乙女の友』の付録である花模様の『フローラ・ゲーム』の札をこっそり机にしまい、折に触れて見返し

生き抜いた、佐倉波津子の物語

 

感想

乙女がうっとりするくらいの詩を書く、有賀主筆

同じく絵やデザインなどを手がける、長谷川純司

華やかな印象の執筆者であり霧島美蘭

有賀のいとこ、佐籐史絵里

と言う登場人物に囲まれた、一見華やかな『乙女の友』の人物たち

有賀主筆と純司の二人なんて

どちらかが、ハツの恋の相手になるんじゃないかと思う

恋愛脳がいつのまにか、乙女の友たちのみんなの心情に入り込んでいた

400ページを超えて、私的には大作で

1時間読んでは休憩し、その間に『彼方の友へ』のことについて思いふけった

 

ハツが執筆者になったあと、反響がまったくないハツへ向けられた、

空井のエピソードが好きだ。

同じ境遇にいた空井が、ある日届いたファンレターに「ツヅキ、ハヤクヨミタシ」と大きく書かれており、「届いた」と感じたこと。

他にも思わず、涙腺がゆるくなった箇所があるので

おすすめだ

 

ちなみに

漢字をひらがなであえて出版物に載せるとき

『開く』という表現を使っていた有賀主筆

私も彼と同じ意見だ

開くと漢字で書くより、やわらかい印象になる

漢字の持つ意味もそれはそれで重要だが

場面によっては、ひらがなで表現するという手法

編集の場で使われていた事に、ちょっぴり嬉しくなった

 

ちなみにその二 

タイトルに付けた、「濃い物語」はもう一つ意味があるので

そちらも楽しみにして読んで頂きたい

 

1,302冊目

『彼方の友へ』 伊吹有喜

彼方の友へ

彼方の友へ

 

 

今回の隣人は手強かった。(通い猫アルフィーのはつ恋 レイチェル・ウェルズ)

通い猫アルフィーのはつ恋 (ハーパーBOOKS)

 

※ネタバレしてます

通い猫アルフィーの2作目

今回の隣人は手強かった

あらすじ

エドガーロード48番地に新しく引っ越してきたスネル一家

夜中に引っ越してきて、夜中に荷物を解いたり

噂好きでせんさく好きのグッドウィン夫婦に警戒される

その警戒心は、それだけにとどまらず、スネル一家も招き

この辺りではみんな辺りを気を配っているということを、伝える集会を開きたいと

ジョナサンとクレア夫妻が住む、家にやって来た

通い先の本宅である、この家にも一つ問題が起きており

クレアが子供を妊娠したいにもかかわらず、なかなか妊娠できずナーバスになっていた

アルフィーはこれらの問題を解決して、幸せに暮らしたいと考えていた

だが、思うようにはいかない

スネル一家を訪れたアルフィーは、そこで飼い猫スノーボールに出会い

ひと目で恋に落ちてしまう

そんなことにかまってる暇はおろか、構われたくないスノーボールはアルフィーに冷たくし、そっとしておいて欲しいと力になりたいアルフィーの手助けを拒むのであった

もう一つの通い先、フランチェスカ夫妻の子供、アレクセイは学校でいじめられており、はじめて出来た子供の友達であるアレクセイの力になりたいアルフィー

 

数々の問題を解決したいアルフィーだったが・・・

 

感想

アルフィーの持ち味である人と猫と人を結びつける力と、幸せに導く力がなかなか発揮出来ない

やきもきしながら読んだシリーズ2作目でした

 

スネル一家の抱えている問題が、深刻すぎて

人でさえも頭を抱えて、エドガーロードの住人たちでさえ

いつでも力になれることを伝えることで、精一杯だった

そこを、猫であるアルフィーがなんとか出来るはずとは思えず

でも最後にはなんとかなってしまうのだ

スネル一家の問題は、別の人間が大元は解決するのだが

スネル一家とエドガーロードの住人たちを結びつけるのは

やっぱりアルフィーあってのものだった

 

シリーズ4作目まで出ているので

引き続きアルフィーの活躍を期待したい

 

1,301冊目

『通い猫アルフィーのはつ恋』 レイチェル・ウェルズ

通い猫アルフィーのはつ恋 (ハーパーBOOKS)

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毒気のある『婚活中毒』 秋吉理香子

『婚活中毒』 秋吉理香子

婚活中毒

ちょっとした毒気の読了感が好きな方にはおすすめな本

婚活をテーマにした短編集

結婚相談所、街コン、お見合い番組、代理婚活

をそれぞれ別の主人公が婚活をしている

 

全編を通して、起承転結で表現するなら

起承ぐらいまでは、うんうんと有り体に進んでいく

1編目の理想の男なら、見た目良し、性格良し、収入よし文句なしの男性を紹介されたり

2編目なら街コンに参加した先で、ライバルに勝って美人で性格良い彼女と恋人になれたり

と順調な滑り出しをみせる

だが、転で一味違う話の流れになってくる 

滑らかに文章を読み進めていたと思ったら
ぐいっと引き寄せられるような展開が待っている

 

仄暗い読了感がお好みの方は是非手に取って頂きたい

 

1,300冊目

『婚活中毒』 秋吉理香子

婚活中毒

婚活中毒

 

 

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