広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

王を選ぶ麒麟の物語(風の海 迷宮の岸 十二国記 2 小野不由美)

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 小野不由美

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫)

あらすじ

戴国麒麟・泰麒の戴王を選ぶまでの物語

突如襲った<蝕(しょく)>地鳴りと突風により、麒麟の泰果(たいか)がどこかへ飛んでいってしまう

それは幾年経っても、見つけることの出来ない場所にあった

女怪の白汕子が待ち望んでいた大事な泰麒。泰果が失われたショックで言葉を話せなくなる。

10年後ようやく見つけ出したのは、同じ麒麟の延台輔(えんたいほ)だった

廉台輔(れんたいほ)の助力で蓬莱・日本から救い出すことが出来た泰麒

本来ならば麒麟は蓬山(ほうざん)の蓬盧宮にある捨身木(しゃしんぼく)に実り、実から生まれ落ちた後も女怪の乳を飲み麒麟の姿で育ち、5年ほどしたら人型になるのを覚え数年後乳離をし大人になるのだった。その間蓬山で育つはずだった。だが、蝕により蓬莱で10年を過ごした泰麒には麒麟の姿になる転変も出来ず、身を守るために使役する使令もいない。

女仙達の世話になることしか出来ず転変をして女仙を喜ばすことが出来ない、と落ち込む泰麒。

そんな泰麒を心配して隣国の麒麟・慶麒が蓬盧宮にやって来る。しばらく滞在するという慶麒に麒麟についてのあれこれを聞くが、そっけない態度の慶麒に近寄りがたい雰囲気を感じる泰麒。しまいには泣かせてしまい、女仙から怒られる始末。あまり苛めるなと怒られて、再度泰麒に会う慶麒。麒麟かどうか自信がないという泰麒に対して、麒麟麒麟に違いなく、泰麒は麒麟の気配がすると答える。安堵する泰麒。女仙によくされても蓬莱の母が恋しいと泣く。麒麟の姿を見せ、麒麟なら蓬莱へも行くことが出来るとわかる。転変さえすれば、寂しくて堪らないときに家を覗きにいけると知った泰麒。

そうやって過ごしているうちに、麒麟に選ばれるために門が開かれる夏至の時期が迫っていた。

 

感想

10歳といえば小学四年生か、それくらいの子供が親元を離れ知らない土地に突然行き、自分が異国の生まれでそもそも親がいなかったのだ。と知る状況。祖母の力が強い状況で母親がいくら弱々しくても、10年育ててもらった情というものは簡単にはなくならないし、離れてみると寂しくなるものなのかもしれない。

日本での生活で馴染めず友達も居なかった泰麒。麒麟の記憶はなくても、額を触られるのも血を見るのも嫌だったのは、やはり麒麟だからだった。自分はこっちの人間だったのだと腑に落ちる。

だからこそ、良くしてくれる女仙達の期待に答えたい。早く転変して麒麟の姿を見せてあげたい。という気持ちになるのだろう。だが、気ばかり焦っても麒麟にはなれないのだ。麒麟になれるかどうかは麒麟しか知らず、女仙達が教えられることはなかった。だから同じ麒麟である慶麒が頼みの綱なんだが、この慶麒言葉が冷たく、態度も近寄りがたい。わずかでも泰麒の柔らかな基質を慶麒に見習って欲しいという玉葉の気持ちもわからんではなかった。でも、泰麒は慶麒のことを最初からやさしかったと述べているから、見るところが違ったのかもしれない。

 

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