広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

御息所とのやり取り(源氏物語 賢木 10 角田光代訳)

源氏物語 賢木 10 角田光代

源氏物語 上 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集04)

あらすじ

娘の斎宮が伊勢に下る日が近づくにつれ、母の六条御息所は心細くなっていた。葵の上が亡くなってから、正妻におさまるのは御息所ではないかと世間では噂されており、御息所も期待に胸を膨らませていた。だが、光君の足は遠のく一方である。そうなる原因にも心当たりがあるので、御息所は思いを断ち切って伊勢へ下る決心をしていた。光君は、これっきりなるとわかると流石に名残惜しくなり、心を込めた手紙などを送っていた。御息所は逢えば決心が揺らぐと逢わずにいた。

そうしているうちに桐壺帝が体調を崩し、伏せるようになった。

父の桐壺帝が病に臥せり、光君はますます心の余裕もなくなったが、御息所のことも気になっており、他人が聞いても薄情と言われるだろうと思い、御息所の居る野宮まで訪ねていくことにした。

お忍びの訪問なので光君は気遣っていたが、その姿もまた立派であった。

御息所に会おうとしたが、女房たちの取次でなかなか直接目通り願えない。

そんな御息所に光君が、今では恋しい人を訪ねてくるのも難しくなりました。それをわかってくださるなら、どうぞこのように注連の外に追いやらないでくださいませんか。心置きなくお話をして、気持ちを晴らしたいのです。と心をこめて話しかけた。

流石に気の毒になった女房たちが御息所に訴え、しぶしぶ出ていった。

光君は持参していた榊を御簾の中に差し入れて、この榊のように、変わらない私の心を道標にして、禁制の神垣をも超えて参ったのです。それなのに冷たくなさるのですね。と言った。

この辺りには榊も植わってないのに、どこから持ってきたのでしょう。という御息所に光君は、神に仕える少女がいるあたりだと思い、榊の葉の香りもなつかしいので、さがし求めて折ったのです。と言う。

これまでのことを振り返り、伊勢行きを思いとどまるよう伝える光君。

だが、御息所の伊勢行きは止められず・・・

 

感想

賢木のタイトルはおそらく、御息所と逢瀬を重ねた時の榊にちなんでいると思う。

本意ではないとはいえ、大事な人を呪い殺されたのに、その本人とこうも恋を続けられる光君の度胸。恨めしくないのかしら。あれ程悲しんでいた葵の上のこと、忘れられないと思うのに。優しいのか、それとも御息所への想いが勝ったのか。でも光君も言っていたけど、欠点があるからと言って冷めてしまい、しばらく放置していたのだからそうでもないのか。だけどもだからといって、捨て置くにはもったいないのだろうか。

忘れられないと言えば、藤壺。この方もかわいそうなかた。光君の子ということを知られてしまったらどうしようと日々怯え、桐壺帝がなくなった後もその思いがなくならず、出家してしまう。呑気なのは光君だけじゃないのかと思う。

そう、桐壺帝が亡くなってしまうのだ。昨年妻を亡くして次は父親。これで両親も妻もなくしたことになる光君。天涯孤独の身となる。葵の上とは違い、さほど悲しまず日々を送っていた光君。それはやはり、紫の上や朧月夜、藤壺が居たからじゃないだろうか。

その朧月夜との関係もついに弘徽殿大后に知れることとなり・・・

バレちゃいましたね、密やかに密会してたのに。でもしばらく内密にしておこうとか右大臣に言われて、大后の機嫌悪かったけど。そして聞き捨てならない、不穏な言葉を口にしてる、ひやー。源氏を陥れるべき手立てを講じるのにはいい機会だ。とか言ってるよー。大丈夫か!?光君よ!

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