広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

みんなで一つの船を作る(乗りかかった船 瀧羽麻子)

乗りかかった船 瀧羽麻子

乗りかかった船

あらすじ

中堅造船所で働く人々の短編集

印象に残ったのは、希望に添えない部署で働くことになった男性の話。(海に出る)とみんなで一つの船を作るというフレーズ。あとは、女性管理職の人の話。(波に挑む)

海に出る

船を作りたくて応募したはずの造船会社。研修を終えて配属されたのは営業だった。最初は不満だらけだったが、やり甲斐を見出し始めた頃また移動の知らせが。今度は人事部に配属になった。自分は必要とされていないんじゃないか。そういう思いを胸に、新人研修をする。同じ境遇の新人を目の当たりにした時、慰めの言葉はありきたりな言葉だった。影でたぬきと呼ばれる人事部部長から、喜ばしい言葉を受けた時、男性が思ったこととは・・・

誰でも意に染まないことってある。そんな時、いや、意に染まないところに居た時、ただ愚痴を述べるだけなのか、はたまた自分で何かやり甲斐を見つけて奮起するのかはその人次第。でも、意に染まないのは自分だけで、ひょっとしたら何か特別な必要とされる理由があって意に染まない結果になったのだとしたら・・・っていう話でした。

波に挑む

女性管理職、事業戦略室の室長となった女性の話。
その外見から舐められることが多いことを自覚していたので、メイクや服装に気を使って努力していた。研究職から管理職へ。努力して、同僚とも結婚した。同じ女性からも妬まれるが、踏ん張って頑張ってきた。その様子を見た旦那から、なんでもかんでも引き受けすぎとか頑張り過ぎとか言われたが、頑張ってほしいと君なら出来ると応援して欲しかったのだ。はじめての事業戦略室で、他社との会議という名の飲み会で思い切ったことを言い逆に反感を買ってへこんだ。社長に呼び出され、逆転が得意だと聞いている、頑張れと言われ勇気が力が湧いてきた。これだと、何へこんでたんだろう自分。そうだ、自分は今まで逆転の立場から這い上がってきた。それを見守ってくれてた旦那もいるのだ。

同じ女性として、とても尊敬できる。生き方をしていると思う。この女性は他の短編でも出てくる、もちろん事業戦略室の室長として。小さいのにハツラツと姉御肌と称されていた。
出来る社長を持ってこの人は幸せだと思う。理解のある人が上につくのと、そうでないのとストレスが違うし、力の見せ所も伸ばし方も違ってくると思うから。

最後に、みんなで一つの船を作るというフレーズ。
営業が仕事を受注し、設計が船の図面を作り、資材調達部が資材を準備し、と言う流れ。
みんなで大きな船を作り上げる。部署を超えた交流はないかもしれないが、ひとつのものを作り上げるという大きな意思で一つになっている団結感。それが読んでいると分かる作品でした。

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