広く浅く

広く浅く

本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

どこか教訓的道徳的な4巻(風の万里 黎明の空 (上) 十二国記 4 小野 不由美)

風の万里 黎明の空 (上) 十二国記 4 小野 不由美

風の万里  黎明の空 (上) 十二国記 4 (新潮文庫)

あらすじ

月の影 影の海で主人公となった陽子のその後と、祥瓊、鈴3人のそれぞれを描く

即位式にこれでもかと飾り立てられることになれない陽子

隣国延王も祝いにかけつける。延王の前でも飾りつけようとする女官に、そんなに飾り付けてたら延王に何を言われるかわからないし、自分ももっと質素な服を着たいと伝える

右も左も分からない政治で麒麟の景麒に頼らないと何もわからないことに苛立ちと不安を覚える

臣下達もそんな陽子をどこか蔑んだ目で見てため息ばかりつく日々

放り出すわけではないけれど、街の様子が見たいとしばらく王宮を開けることを景麒に告げる

逗留先すら自ら選ぼうとする陽子に景麒はそれだけは自分に任せて欲しいと頼み込み承諾される

 

変わって、芳国。厳しすぎる政治に簒奪者が現れ、王・王妃ともに公主の目の前で惨殺される。

貧困で苦しくなった子供が一個の餅を盗んだ罰に死刑にまでする、という王のやり方を、全く知らずに華美な宝飾品や優雅な暮らしに浸っていた公主・祥瓊。何も知らないでいいという王の考えを丸呑みにして、公主の勤めを果たすべくもなかった祥瓊に簒奪者・月渓は仙籍を削除し街で市民に紛れて暮らすよう告げた。

引取先の里家・孤児たちが暮らす家では、沍姆(ごぼ)に公主であることを知られいじめ抜かれる日々。珠のように白かった肌はそばかすか浮かび、指は節くれだってしまっていた。

月渓を憎み、沍姆や自らの置かれた環境をかつて優雅に暮らしていた生活と比べ日々悔しがる。いっそこのまま目覚めなければ良いのにとも。

 

才国の凌雲山に翠微洞があり、そこには一人の仙が住んでいた。名を梨耀、通称を翠微君という。

その梨耀に仕える仙の一人、鈴。海客である彼女は、旅の一座で働いていたが、海客であるために言葉が分からず雑用しかまかせられなかった。仙になれば言葉に困らないと知り、梨耀に頼み込み仙にしてもらった。梨耀の下男下女に対する扱いは酷く、なかでも鈴にたいしてその効力が大きかった。

この劣悪な環境にいるふたり、祥瓊と鈴は慶国に新しく自分と同じ年頃の若い少女が王として即位したことを知ったとき、ふたりは景王に会ってみたいと思った。祥瓊はその恵まれた立場に、鈴は同じ海客ならこの言葉の通じない世界でどれだけ苦労したかや寂しさも分かち合えると。果たしてふたりは景王に会うことが出来るのか・・・

 

感想

鬱々とした上巻

父親のしてきたことを全くかけらも知らず仙籍に入って、いつまでも若々しく華美で豪華な世界にあぐらをかいて座っていた祥瓊。まぁその後の成り行きは当然と言ってしかるべき代償だと思う。ただ、里家で公主だとみんなに知られた時、クルマで引き裂こうとする場面には同情した。

それと同時に、誰も王の言うことを止められず結果惨殺される。という王の臣下の恵まれなさ。王の周りの人間の言葉も聞き入れない独走とした政治に不憫だと感じる。

鈴は、才国の王も言っていたし、慶国まで行く道中に知り合う清秀も揃って口にしていた、鈴の子供っぽいところ。仙籍に入ることで、言葉に不自由しないが同時に老いもしないことで、鈴はどれだけの時間を過ごした?100年も人生を生きれば、どこかで悟るし大人になるというもの。だが、鈴はいつまでたっても子供っぽかった。自らの置かれた環境に文句しか言えず、不幸だと嘆くことで日々を生きていた。かと言って、そこから抜け出そうともせず、甘んじていた。

清秀は、両親が目の前で妖魔に殺されて、故郷も亡くなり景に逃げる途中の船で鈴にあった。そこで、たっぷりとお説教ではないかもしれないが甘ったれた感情をあらわにされ、ちょっとはましになった鈴。同じく祥瓊も楽俊と出会い、自らの置かれていた公主という立場の責任、何も知らないことを教えられ気付かされる。

救いがあるのはこうやって、ふたりとも人の話を聞く耳があったことだった。これで、せっかくお説教してくれる人に耳を貸さなければ、人として屑だから。

これからの下巻が楽しみだ。

 

下巻はこちら

hiroku-asaku.hatenablog.com

注目記事