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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

人は変われる(風の万里 黎明の空 (下) 十二国記 4 小野 不由美)

風の万里 黎明の空 (下) 十二国記 4 小野 不由美

風の万里  黎明の空 (下) 十二国記 4 (新潮文庫)

あらすじ

前半で見せ所のなかった祥瓊(しょうけい)、鈴の挽回の下巻(上巻はこちら

上巻で鈴と共に旅をしていた清秀(せいしゅう)、過去に襲われた妖魔の傷が痛み、慶国王の住む金波宮へ治療をしてもらうため向かっていた。だが、慶国の止水まで来た時鈴が目を離していたすきに清秀はクルマに轢かれて亡くなってしまう。

クルマに乗っていたのは止水の郷長・昇紘で、具合の悪かった清秀が道端にうずくまっていたのを避けずに轢いたのだった。昇紘は人を人とも思わない政治で民を虐げ、民から恨まれている。税が7割、民は貧しく食うのがやっとで、税を収めるのを怠ると磔刑が待っているという恐ろしい罰。昇紘の上役で和州侯呀峰(がほう)は昇紘をかばうのであてにならない。王は一体何をやっているのかという民たち。

王に和州の止水がどのような現状なのかを知らせるため、これ以上の政治は耐えられないため集まる人々。その中に鈴が居た。鈴は清秀が轢かれたクルマが昇紘だと知ると、妖獣を買い(昇紘は仙のため)仙を斬ることの出来る剣を買い揃えて、昇紘の家を下調べしいざ乗り込もうとした時呼び止められた。呼び止めたのは、鈴が宿泊していた宿屋の夕暉(せっき)。彼に説得されて宿屋まで戻ると、昇紘に一矢報いようと準備してきたという虎嘯(こしよう)達の仲間に誘われたのだった。

祥瓊はとある傭兵の集まりに拾われていた。止水で磔刑にされている人を見た祥瓊、たまらず石を投げて止めようとするが官吏に追い立てられ、逃げているところを桓魋(かんたい)という傭兵に助けられる。官吏がまだ祥瓊を探しているかもしれないので、しばらく桓魋の居る宿にやっかいになることに。

一方陽子は遠甫(えんほ)の家で教えを乞うたり、昇紘のいる止水を視察していたりしていた。王宮にいるだけでは知らなかった事実を知って、何も知らなかったことを知る陽子。早くに王宮に戻らなければならないとしていた矢先・・・

 

感想

見違えるような人となりになった祥瓊と鈴。鈴は清秀が亡くなって復讐を企ててたところにまた清秀と似た利発な少年・夕暉と出会う。あの甘ったれた子供じみたところが段々と薄くなってきていた。

はじめに祥瓊と鈴が出会いふたりでなごやかに会話するシーン。自分の口からかつては、芳国の公主だったことを告げる。王が憎まれていたのは仕方なかった、それでも悲しいこと、憎まれる前に父を諌めればよかったことを話した。また、王が昇紘を罰せられないのは王が癒着しているせいだと言う鈴に、そんなことはないはず。とかばってくれる。それは楽俊に出会って、楽俊が陽子の友達で悩みながら王になっていることを聞いたからだった。鈴もまた、長年憂いできた海客だということや、景王に会いたかったのだと話した。打ち解けたふたり、また会えたいいと告げて別れた。

ふたりとも、自分の問題だった悩みのタネだったこと苦しんでたことを、平静に話すことが出来るようになっていた。それはやっぱり楽俊や清秀のおかげであったけれども、ふたりの元々の性質が根っから腐ってなかったことを意味するシーン。

その他にも、陽子と祥瓊と鈴が昇紘に奇襲をかけるために集まって攻撃していた時、3人で集まる機会があってその場で陽子は自分が景王だと告げた。祥瓊が楽俊と出会い、周りが景王を悪者だと決めつけるなか自分はいい人だと思うと話してくれた祥瓊に対しての言葉だった。他にも鈴は翠微洞にいて、辛かったこと、それと同じ思いを今止水の人がしていることを語る。なんだかみんな大人に急激に成長したなぁと思えた。

そして陽子のはじめての初勅が、蓬莱で育った陽子の性格とかを表しているらしい。確かにそうだとおもう、初勅。祥瓊がはじめて楽俊にたいして抱いた、感謝の気持ちとお詫びの気持ち。それがあると、自然と頭が下がる。ただただ、頭を下げれていればいいという問題でもない。その人の気持を表してほしいという、無理やり上から押し付けて下げさせるものではないという陽子の気持ち。今まで、官吏に舐められていた陽子ならでは。それに華美で豪華な衣装も辞めちゃって、官服を着て朝議に現れた陽子。本当に真にやりたいことやるべきことを見出した一本の筋が見えたそんな朝議の様子だった。それはやはり、王宮に居るだけでは分からなかったこと、遠甫の存在、実際に街に出てみてわかる民の暮らしぶり。いい王に今度こそなるぞ、景麒よ。

 

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