広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

ホワイトタイガーと少女が呪いを解くファンタジー(白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ)

白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ1作目

あらすじ

両親を亡くした少女・ケルシーは夏休みの間働ける場所を探していた

相談所で紹介されたのが、サーカスでのバイト。2週間限定の虎の世話と雑用を住み込みでやるというもの。

初めてホワイトタイガーのディレンを見た時、特別な感情が湧き困惑するケルシー

ディレンにどこか惹かれ、「レン」という愛称を付け、何かにつけてはレンのそばで

日記を書いたり詩を読んだりしていた。

ところがある日、紳士風の男性がサーカスを訪れ、レンをインドの保護施設で暮らさせたいと申し出があった。

インドまでの輸送に何故か、ケルシーまで同行することに

その際中、レンとケルシーはジャングルに置き去りにされ・・・!?

 

感想

とっても残念なのが、2作目までしか刊行されていないということ

原作は4作あるので是非とも続きが読みたい所なのだが

どうなんでしょう ヴィレッジブックスさん・・・

特設サイトを当初は設けたくらいだしなぁ

 

肝心の本の感想

まぁ モフラーとしては大変満足できる

ケルシーうらやましい

本来は人間だから、万が一にも襲われる心配はしなくていいはずなので

存分にもふられる訳で

実際、レンから甘えられるというか、もふもふしている

 

設定も、本来はインドの王子様とのラブストーリもあり

謎解きもあり冒険あり

全編で577ページもあるけども、飽きさせない作りになってるはず

 

翻訳物で、途中で翻訳されなくなる本は結構あるのだろうか

あるのだとしたら、残念だなぁ

原著で読めるようになれば良いけど(遠い目) 

 

白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ#1 (タイガーズ・カース・シリーズ # 1)

白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ#1 (タイガーズ・カース・シリーズ # 1)

 

 

銭形平次捕物控 金色の処女 野村胡堂

言わずと知れた銭形平次の物語第一弾

あらすじ

三代将軍家光が何者かに命を狙われた

鷹狩をしていた家光を、矢がかすめたのだ

しかもその矢には『トリカブト』が塗ってあった

その犯人を平次に突き止めてほしいと

奉行所の笹野に頼まれる

 

感想

 短編(19ページ)なのでさらりと読める

銭形平次のあだ名となった所以や

まさに銭を使って、相手を討ち取るシーンなど

目白押し

 

旧字旧仮名とあって多少読み辛いのが難点だが

致し方あるまい

 

 

 

着物好きにはおすすめ(下鴨アンティーク アリスと紫式部 白川紺子)

あらすじ

祖母に「開けてはいけない」と言われていた蔵の着物が気になって、開けてしまった主人公・鹿乃

着物を虫干ししていたら、ある着物から物音がして、気付いたら着物の柄が変化していたのだった

近所に住んでいた持ち主を訪ねて詳細を聞きに行く

 

表題「アリスと紫式部」を含む3編の物語

 

感想

この小説は、集英社オレンジ文庫というもので

公式によると、ライト文芸レーベルらしい

なので、比較的軽い読み物である

登場人物たちも、個性豊かで

祖母の着物を日常的に着こなす、高校生の鹿乃

下宿人で准教授、兄の友達・慧

黙っていれば白皙の美少年、ぐうたらの兄・良鷹

という面子

 

内容は、ミステリーという位置づけらしいが

着物にまつわる不思議な出来事が起こるから、ある種のファンタジーとも言えるかも

着物好きにはおすすめのシリーズ作品

 

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

 

 

就活生のあれやこれやの葛藤を描く(何者 朝井リョウ)

就活生のあれやこれやの葛藤を描く

 

あらすじ

劇団で脚本を書いている主人公・拓人は、バンド活動をしている光太郎とルームシェア

友人の瑞月はもう就活をはじめている

上の階に住んでいるという成り行きで、瑞月の友人・理香と共に就活の準備を始めることに

主に理香の部屋で準備をするが、何かと冷めた意見を述べる理香の彼氏・隆良

相槌だけをうっている光太郎

大人な対応をする瑞月

俯瞰している拓人

それぞれの思いの中、就職に向けての準備を進めていく

 

感想

人物紹介の時点で、Twitterっぽいプロフィールだったから

これはもしかしなくとも、ネット関連のいざこざかしら~なんて思っていた

あながち間違いではなかったけれども

自分とは違う何かになりたくて、本名ではない名前で呟いたり、こうやってブログを書いたりして、普段言えないことをキャラじゃないとか立場とか取っ払って言える「場」がある

「場」があって、同じ境遇とか趣味の人と繋がれる環境は恵まれてると思う

ネットがなければ、同じ思いの人が他にもいるなんて簡単には共有出来なかったから

 

本文の中で印象的なのが光太郎のセリフ

「それと同じでさ、ピーマンが食べれないように、逆上がりができないように、ただ就活が苦手な人だっているわけじゃん。それなのに、就活がうまくいかないだけで、その人が丸ごとダメみたいになる」

だよなー

自己アピールとか志望動機とか、上手いこと言えない人だっている

彼等はいいほう。だって仲間が居た。相談し合える。相談してるエピソードはなかったけど

私だって苦手だった。エントリーシートとか

作文は得意だったけど、面接が苦手で。ガチガチに緊張してたなぁ

今となっては、力入りすぎてたんだなぁぐらいにしか思わないけど当時はそうとう一生懸命だった。

 

何者

何者かになりたくて、でもそうじゃなくて

ダメダメな自分を受け入れて、いいとこも見つけてありのままの自分を見つめることが大事なんだという作品でした

 

第148回直木賞受賞作品

何者

何者

 

 

不思議な力を持つ鍼灸師・節子(消えてなくなっても 椰月美智子)

あらすじ

不思議な力を持つ鍼灸師・節子

彼女のもとには様々な患者が訪れる

「あおの」と「つきの」もその内の一人

あおのは得体の知れない恐怖に突如襲われる病

つきのは、付き合ってた彼氏にふられてむしゃくしゃしているところを、節子に拾われた

それぞれに悩みを抱え、彼女とともに生活するうちに変化が訪れる

それは、二人の過去、ルーツを辿るものだった

 

感想

読み終わった時、タイトルを見て

なんか救われたというか

終わりじゃないんだとか

河童のキヨシが言ってた「会えなくなったら友達じゃないのか」が心に響いた

 

でもまぁ 運命って言葉は残酷だな

運命が二人を引き合わせた、ならもっと早くたって良かったはず

なにも二人同時に・・・なんて

だけど、同時期だからこそ糸が繋がって最後は救いがある展開になったのかなぁなんて

 

読み返してみると、うまい具合に書いてある

流石、作家さん

決定的なことは気づかれないように、でも事実を

 

ある意味ハッピーエンドな物語でした

 

消えてなくなっても (幽ブックス)

消えてなくなっても (幽ブックス)

 

 

傷ついた少年が、周りに目を向けて前を向くまでの話(花舞う里 古内一絵)

傷ついた少年が、周りに目を向けて前を向くまでの話

 

あらすじ

愛知県の奥三河という場所に引っ越すことになった、中学二年生の潤。

クラスメイトは潤含めて4人、という少数学級。

小学校と中学校が併設されており、最上級生に当たる中学二年生のクラスメイトたちは、小学生の揉め事も授業の最中にかかわらず仲裁に入っていた。

そんな澄川では、伝統芸能花祭り」があった。

この花祭り、老若男女問わず参加し、県外からの見物客も訪れる大変賑わいのある行事であった。

しかし、いきなり都会から田舎に引っ越してきて馴染めない潤は、花祭りの練習にも参加せず、かといって家でも祖母や母親との関係に悩み居場所がなかった。

ある日学校でもいざこざを起こし、家でも母親と喧嘩をした潤は、がむしゃらに山道を駆け行き意識を失ってしまう。

 

感想

老人とハナ、潤という構図のシーンが特に好きだった。

干渉しあうわけではないけれども、突き放しているのではなく認められているような雰囲気。潤もここでなら『自由に呼吸ができる自分を感じた』と思っていたし。

ここで老人とハナと接することで、癒やされて周りを見るきっかけになったんじゃないかと思う。

 

結局、自分自身で立ち直らなければ、気付かなければ乗り越えられないのかもしれない。周りは手助けはできるけど、それだけなのかもしれない。

 

花舞う里

花舞う里

 

 

豆腐屋を江戸で営むこととなった男の一代記(あかね空 山本一力)

豆腐屋を江戸で営むこととなった男の一代記

かと思いきや、母の愛情物語でもあった(あかね空 山本一力

 

あらすじ

京都で修行を積んだ永吉が店を構えようとやってきたのは江戸だった

なかなか受け入れられることのなかった、京の豆腐屋

しかし、妻の機転のおかげでなんとか軌道に乗ることが出来た

子供も生まれ、順風満帆に思えたある日

長男があやまって怪我をしてしまう

まだ赤ん坊の身、助かるかどうかは分からない

母親のおふみは富岡八幡宮に願掛けをしに行く

そのおかげもあってか、長男栄太郎は一命を取り留めたが

おふみはその日を境に、栄太郎をわにかけて可愛がるようになった

豆腐屋永吉とその子供二代に渡る、人情話

 

感想

第126回直木賞受賞作品

長い。全編で399ページ

普通の時代小説ならもっと短い印象があるのに、およそ400ページに渡る

それを一気に集中して読んでしまわせる文筆

普通なら、永吉とおふみが結婚して、豆腐屋も繁盛して終わり。となりそうな所

 

読み終わってみて、印象的だったのが

おふみの生き方だった

最後まで願掛けした通りに行動して、子どもたちを守りぬいたその心情

不運が重なって、自分の責任だと感じてしまった所

自分の子供が可愛くないなんて、ないよなぁ

でも、こうやって物語の中だからこそ盛大なネタバレが出来るのであって

普通に暮らしてたら、誰も「あの人はこうこうこうだったからああいう行動をしてたんだよ」なんて説明してくれない

だから話し合いが大事なんだ、とかコミュニケーションが~とか言うんだろう

 

解説でも触れていたが

真の主人公は母親であるおふみかもしれない

 

 

あかね空 (文春文庫)

あかね空 (文春文庫)

 

 

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