広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

光源氏誕生の話(源氏物語 桐壺 01 紫式部 與謝野晶子訳)

青空文庫 源氏物語 桐壺 01 紫式部 與謝野晶子訳 

あらすじ

のちの光源氏を生んだ母と、父の物語

貴族の生まれではないが、帝に愛されて、桐壺というところに住んでいた女性がいた

あまりにも帝が桐壺の更衣ばかり寵愛するので、桐壺は嫉妬されていた

そんな桐壺に男の子が生まれる

とても美しくまた聡明であったので、だれも文句を言えなかった

ところが、この男の子が3つになった時、桐壺が病気になり亡くなってしまう

桐壺が亡くなってからというもの帝は他の女性に関心がなくなってしまう

ある日亡くなった桐壺によく似た女性がいるという噂を聞いて

帝はその女性を入内させた

帝によくなついていた男の子(のちの光源氏)は帝がよく藤壺に行くので

自然と藤壺の宮に関心がいった

帝も、藤壺に幼くしてあなたによく似た母親を亡くした源氏を可愛がってやってくれ、と頼み、また源氏も母親を亡くした思いから、似ているという藤壺に関心を抱いた

源氏が元服を迎えた頃、縁談が持ち上がり

左大臣の婿になったが、藤壺の宮が恋しくもあった

 

感想

青空文庫版を読んだのだけど、現代語に訳したのが与謝野晶子で驚き

あの有名人が訳していたとは・・・

実際読んでみて、思ったよりは読みやすく

それは新字新仮名のせいかもしれないけれども

楽しめた

 

内容のほうは

後宮入りしたのにある人ばかり寵愛されては、他の更衣たちから妬まれるだろうなぁ

その人しか目になかったのかもしれないけども、帝として桐壺を守るために上手く立ち回ってあげても良かったのじゃないかと思う

自分のことしか考えてない感じした。何様俺様帝様

光源氏は、あれだ

物心つく前に母親亡くして、母というものを知らずに成長したもんだから

母によく似たと言われている藤壺が気になる

母子ともに気の毒な生い立ちというか

でもこれから光源氏は華々しい恋愛をしていくはず

 

源氏物語、長いという印象しかなかったので今まで読んでなかったけれども

一つの話が意外と短くすんなりと読めた

全編で56編あるので

これくらいの長さなら割と読み切れるんじゃなかろうか

ちなみに桐壺は18ページあった

 

源氏物語 01 桐壺

源氏物語 01 桐壺

 

 

ホワイトタイガーと少女が呪いを解くファンタジー(白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ)

白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ1作目

あらすじ

両親を亡くした少女・ケルシーは夏休みの間働ける場所を探していた

相談所で紹介されたのが、サーカスでのバイト。2週間限定の虎の世話と雑用を住み込みでやるというもの。

初めてホワイトタイガーのディレンを見た時、特別な感情が湧き困惑するケルシー

ディレンにどこか惹かれ、「レン」という愛称を付け、何かにつけてはレンのそばで

日記を書いたり詩を読んだりしていた。

ところがある日、紳士風の男性がサーカスを訪れ、レンをインドの保護施設で暮らさせたいと申し出があった。

インドまでの輸送に何故か、ケルシーまで同行することに

その際中、レンとケルシーはジャングルに置き去りにされ・・・!?

 

感想

とっても残念なのが、2作目までしか刊行されていないということ

原作は4作あるので是非とも続きが読みたい所なのだが

どうなんでしょう ヴィレッジブックスさん・・・

特設サイトを当初は設けたくらいだしなぁ

 

肝心の本の感想

まぁ モフラーとしては大変満足できる

ケルシーうらやましい

本来は人間だから、万が一にも襲われる心配はしなくていいはずなので

存分にもふられる訳で

実際、レンから甘えられるというか、もふもふしている

 

設定も、本来はインドの王子様とのラブストーリもあり

謎解きもあり冒険あり

全編で577ページもあるけども、飽きさせない作りになってるはず

 

翻訳物で、途中で翻訳されなくなる本は結構あるのだろうか

あるのだとしたら、残念だなぁ

原著で読めるようになれば良いけど(遠い目) 

 

白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ#1 (タイガーズ・カース・シリーズ # 1)

白い虎の月 タイガーズ・カース・シリーズ#1 (タイガーズ・カース・シリーズ # 1)

 

 

銭形平次捕物控 金色の処女 野村胡堂

言わずと知れた銭形平次の物語第一弾

あらすじ

三代将軍家光が何者かに命を狙われた

鷹狩をしていた家光を、矢がかすめたのだ

しかもその矢には『トリカブト』が塗ってあった

その犯人を平次に突き止めてほしいと

奉行所の笹野に頼まれる

 

感想

 短編(19ページ)なのでさらりと読める

銭形平次のあだ名となった所以や

まさに銭を使って、相手を討ち取るシーンなど

目白押し

 

旧字旧仮名とあって多少読み辛いのが難点だが

致し方あるまい

 

 

 

着物好きにはおすすめ(下鴨アンティーク アリスと紫式部 白川紺子)

あらすじ

祖母に「開けてはいけない」と言われていた蔵の着物が気になって、開けてしまった主人公・鹿乃

着物を虫干ししていたら、ある着物から物音がして、気付いたら着物の柄が変化していたのだった

近所に住んでいた持ち主を訪ねて詳細を聞きに行く

 

表題「アリスと紫式部」を含む3編の物語

 

感想

この小説は、集英社オレンジ文庫というもので

公式によると、ライト文芸レーベルらしい

なので、比較的軽い読み物である

登場人物たちも、個性豊かで

祖母の着物を日常的に着こなす、高校生の鹿乃

下宿人で准教授、兄の友達・慧

黙っていれば白皙の美少年、ぐうたらの兄・良鷹

という面子

 

内容は、ミステリーという位置づけらしいが

着物にまつわる不思議な出来事が起こるから、ある種のファンタジーとも言えるかも

着物好きにはおすすめのシリーズ作品

 

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

 

 

就活生のあれやこれやの葛藤を描く(何者 朝井リョウ)

就活生のあれやこれやの葛藤を描く

 

あらすじ

劇団で脚本を書いている主人公・拓人は、バンド活動をしている光太郎とルームシェア

友人の瑞月はもう就活をはじめている

上の階に住んでいるという成り行きで、瑞月の友人・理香と共に就活の準備を始めることに

主に理香の部屋で準備をするが、何かと冷めた意見を述べる理香の彼氏・隆良

相槌だけをうっている光太郎

大人な対応をする瑞月

俯瞰している拓人

それぞれの思いの中、就職に向けての準備を進めていく

 

感想

人物紹介の時点で、Twitterっぽいプロフィールだったから

これはもしかしなくとも、ネット関連のいざこざかしら~なんて思っていた

あながち間違いではなかったけれども

自分とは違う何かになりたくて、本名ではない名前で呟いたり、こうやってブログを書いたりして、普段言えないことをキャラじゃないとか立場とか取っ払って言える「場」がある

「場」があって、同じ境遇とか趣味の人と繋がれる環境は恵まれてると思う

ネットがなければ、同じ思いの人が他にもいるなんて簡単には共有出来なかったから

 

本文の中で印象的なのが光太郎のセリフ

「それと同じでさ、ピーマンが食べれないように、逆上がりができないように、ただ就活が苦手な人だっているわけじゃん。それなのに、就活がうまくいかないだけで、その人が丸ごとダメみたいになる」

だよなー

自己アピールとか志望動機とか、上手いこと言えない人だっている

彼等はいいほう。だって仲間が居た。相談し合える。相談してるエピソードはなかったけど

私だって苦手だった。エントリーシートとか

作文は得意だったけど、面接が苦手で。ガチガチに緊張してたなぁ

今となっては、力入りすぎてたんだなぁぐらいにしか思わないけど当時はそうとう一生懸命だった。

 

何者

何者かになりたくて、でもそうじゃなくて

ダメダメな自分を受け入れて、いいとこも見つけてありのままの自分を見つめることが大事なんだという作品でした

 

第148回直木賞受賞作品

何者

何者

 

 

不思議な力を持つ鍼灸師・節子(消えてなくなっても 椰月美智子)

あらすじ

不思議な力を持つ鍼灸師・節子

彼女のもとには様々な患者が訪れる

「あおの」と「つきの」もその内の一人

あおのは得体の知れない恐怖に突如襲われる病

つきのは、付き合ってた彼氏にふられてむしゃくしゃしているところを、節子に拾われた

それぞれに悩みを抱え、彼女とともに生活するうちに変化が訪れる

それは、二人の過去、ルーツを辿るものだった

 

感想

読み終わった時、タイトルを見て

なんか救われたというか

終わりじゃないんだとか

河童のキヨシが言ってた「会えなくなったら友達じゃないのか」が心に響いた

 

でもまぁ 運命って言葉は残酷だな

運命が二人を引き合わせた、ならもっと早くたって良かったはず

なにも二人同時に・・・なんて

だけど、同時期だからこそ糸が繋がって最後は救いがある展開になったのかなぁなんて

 

読み返してみると、うまい具合に書いてある

流石、作家さん

決定的なことは気づかれないように、でも事実を

 

ある意味ハッピーエンドな物語でした

 

消えてなくなっても (幽ブックス)

消えてなくなっても (幽ブックス)

 

 

傷ついた少年が、周りに目を向けて前を向くまでの話(花舞う里 古内一絵)

傷ついた少年が、周りに目を向けて前を向くまでの話

 

あらすじ

愛知県の奥三河という場所に引っ越すことになった、中学二年生の潤。

クラスメイトは潤含めて4人、という少数学級。

小学校と中学校が併設されており、最上級生に当たる中学二年生のクラスメイトたちは、小学生の揉め事も授業の最中にかかわらず仲裁に入っていた。

そんな澄川では、伝統芸能花祭り」があった。

この花祭り、老若男女問わず参加し、県外からの見物客も訪れる大変賑わいのある行事であった。

しかし、いきなり都会から田舎に引っ越してきて馴染めない潤は、花祭りの練習にも参加せず、かといって家でも祖母や母親との関係に悩み居場所がなかった。

ある日学校でもいざこざを起こし、家でも母親と喧嘩をした潤は、がむしゃらに山道を駆け行き意識を失ってしまう。

 

感想

老人とハナ、潤という構図のシーンが特に好きだった。

干渉しあうわけではないけれども、突き放しているのではなく認められているような雰囲気。潤もここでなら『自由に呼吸ができる自分を感じた』と思っていたし。

ここで老人とハナと接することで、癒やされて周りを見るきっかけになったんじゃないかと思う。

 

結局、自分自身で立ち直らなければ、気付かなければ乗り越えられないのかもしれない。周りは手助けはできるけど、それだけなのかもしれない。

 

花舞う里

花舞う里

 

 

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