広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

傷ついた少年が、周りに目を向けて前を向くまでの話(花舞う里 古内一絵)

傷ついた少年が、周りに目を向けて前を向くまでの話

 

あらすじ

愛知県の奥三河という場所に引っ越すことになった、中学二年生の潤。

クラスメイトは潤含めて4人、という少数学級。

小学校と中学校が併設されており、最上級生に当たる中学二年生のクラスメイトたちは、小学生の揉め事も授業の最中にかかわらず仲裁に入っていた。

そんな澄川では、伝統芸能花祭り」があった。

この花祭り、老若男女問わず参加し、県外からの見物客も訪れる大変賑わいのある行事であった。

しかし、いきなり都会から田舎に引っ越してきて馴染めない潤は、花祭りの練習にも参加せず、かといって家でも祖母や母親との関係に悩み居場所がなかった。

ある日学校でもいざこざを起こし、家でも母親と喧嘩をした潤は、がむしゃらに山道を駆け行き意識を失ってしまう。

 

感想

老人とハナ、潤という構図のシーンが特に好きだった。

干渉しあうわけではないけれども、突き放しているのではなく認められているような雰囲気。潤もここでなら『自由に呼吸ができる自分を感じた』と思っていたし。

ここで老人とハナと接することで、癒やされて周りを見るきっかけになったんじゃないかと思う。

 

結局、自分自身で立ち直らなければ、気付かなければ乗り越えられないのかもしれない。周りは手助けはできるけど、それだけなのかもしれない。

 

花舞う里

花舞う里

 

 

豆腐屋を江戸で営むこととなった男の一代記(あかね空 山本一力)

豆腐屋を江戸で営むこととなった男の一代記

かと思いきや、母の愛情物語でもあった(あかね空 山本一力

 

あらすじ

京都で修行を積んだ永吉が店を構えようとやってきたのは江戸だった

なかなか受け入れられることのなかった、京の豆腐屋

しかし、妻の機転のおかげでなんとか軌道に乗ることが出来た

子供も生まれ、順風満帆に思えたある日

長男があやまって怪我をしてしまう

まだ赤ん坊の身、助かるかどうかは分からない

母親のおふみは富岡八幡宮に願掛けをしに行く

そのおかげもあってか、長男栄太郎は一命を取り留めたが

おふみはその日を境に、栄太郎をわにかけて可愛がるようになった

豆腐屋永吉とその子供二代に渡る、人情話

 

感想

第126回直木賞受賞作品

長い。全編で399ページ

普通の時代小説ならもっと短い印象があるのに、およそ400ページに渡る

それを一気に集中して読んでしまわせる文筆

普通なら、永吉とおふみが結婚して、豆腐屋も繁盛して終わり。となりそうな所

 

読み終わってみて、印象的だったのが

おふみの生き方だった

最後まで願掛けした通りに行動して、子どもたちを守りぬいたその心情

不運が重なって、自分の責任だと感じてしまった所

自分の子供が可愛くないなんて、ないよなぁ

でも、こうやって物語の中だからこそ盛大なネタバレが出来るのであって

普通に暮らしてたら、誰も「あの人はこうこうこうだったからああいう行動をしてたんだよ」なんて説明してくれない

だから話し合いが大事なんだ、とかコミュニケーションが~とか言うんだろう

 

解説でも触れていたが

真の主人公は母親であるおふみかもしれない

 

 

あかね空 (文春文庫)

あかね空 (文春文庫)

 

 

不思議な魔女と呼ばれた人と少女の話(ルリユール 村山早紀)

ルリユール、それは本を修復する人

不思議な魔女と呼ばれた人と少女の話

 

あらすじ

中学1年生の瑠璃は夏休み、祖母の家に一足先に遊びにやってきた

しかし、肝心の祖母は階段から落ちて入院中

そんな折、祖母宅で不思議な夢を見る

怪しげな洋館で真っ赤な髪をした女性と出会う

実際洋館があった場所に行ってみると、そこはルリユールの工房になっていた

どんな状態の本でも元通りにしてみせるというクラウディア

それは魔法としか言いようのない修繕方法だった

 

感想

魔法、それは素敵な言葉

人の手によって修復する本は限界がある

それが魔法で元通りに出来たらなんと素晴らしいことか

またそれだけではなく、文庫本を装幀し直す技術

第二章『星に続く道』に出てくる本たちがキラキラした目線で描かれていること

本好き、装幀も含めて本が好き、むしろ本を選ぶ基準は装幀かも

な私にはときめくポイントだったりする

 

魔法と言っても、本を修復する上での知識や技術はあった上で

どうしても人の手では出来ない部分を、魔法と呼ばれる方法で行ってたかも・・・?

という印象

 

まだまだ、掘り下げていけそうな部分はたくさんあると思うので

『ルリユール』の続編があるなら読みたい

 

 

ルリユール (ポプラ文庫ピュアフル)

ルリユール (ポプラ文庫ピュアフル)

 

 

精霊と共にアンティーク店を再開(アンティークFUGA1 あんびるやすこ)

あらすじ 

ある日突然姿を消した両親

残されたのは中学1年生の風雅とコルノというペンダントだけ

このペンダント、一生に一度だけ願いを叶えてくれる精霊が出現するという

ひょんなことから精霊を呼び出してしまった風雅は

お願いとして精霊に「兄」になって欲しいと頼む

「兄」のシャナイアとともに、両親が残したアンティーク店を再開することに・・・

 

感想

結局の所、両親が居なくなったことの原因とか

判明されなかったわけだけど

それはこれがシリーズ物だったからかしら

 

とまぁさておき

本編

著者は児童書で有名な人らしい

主人公が中学生ということもあり、その年代を対象にしている感はある

というか元は児童書みたい

 

読みやすくて、アニメとかにしたらいいんじゃないかと思ったり

美形の精霊なんて映像化しがいがある

 

日本の時代物で付喪神が出てくる小説とかあるけど

この作品は、海外のアンティークなんで、出てくる付喪神も総じて外人さん

そんなところも映像で見てみたい気もする

 

アンティークFUGAの公式サイト

アンティークFUGA(あんびる やすこ)

 

アンティークFUGA 1 (角川文庫)

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イエスマン “YES”は人生のパスワード

あらすじ

ノーが口癖の銀行員のアレン

妻と離婚し3年、全てに嫌気が差していた

大事な親友の婚約パーティーもすっぽかし

そんな時友人に勧められたYESマンのセミナーに出席

主催者テレンスにアレンの人生そのものを当てられ

イエスの誓約をたてさせられる(半ば無理やり)

半信半疑ながら「イエス」と答えていくと・・・

 

感想

あるテレビでオードリーの春日が海外で「イエス」と応える旅があって

それを観てたら、この映画を観たくなったので選んでみた

現実世界ではちょっと無理があるイエスマン

でも、何事にも後ろ向きではなく前向きに取り組んでいこうという

解釈ならいい結果を生むんじゃなかろうか

 

主演、ジム・キャリー。マスクでも有名な俳優さんですね

声優、山寺宏一。最初は違和感あったけど、映画が展開していくうちにぴったり馴染むようになっていった印象

 

原作者の方がインタビューに答えていたのでリンク貼っときます

builder.japan.zdnet.com

 

getnews.jp

 

 

イエスマン “YES”は人生のパスワード 特別版 [DVD]

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突然婚約者に振られたら・・・?(ビオレタ 寺地はるな)

あらすじ

突然婚約者にふられた妙

雨の中しゃがみこみ、泣いていると声を掛けてきた女性がいた

それが、『ビオレタ』の店主菫さん

彼女に導かれるまま店で介抱され、しまいには何故か店で働くことに

菫さんが手作りした、かわいらしいキラキラした雑貨たち

それと、棺桶

菫さんと関わることで何かに気づき始める妙

 

感想

 「棺桶」という単語の本の紹介文に引き寄せられて

手にとった本

結果的に、「棺桶」はメインの話ではなかったけれども

名脇役的な位置にはいたと思う

菫さんに関わることで、見えてきた自分の足り無さ

婚約者にふられた理由とか、仕事のこととか

性格的な面もそう

妙の成長物語でもある

 

第四回ポプラ社小説新人賞受賞作

 

ビオレタ (一般書)

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女性騎手の話(風の向こうへ駆け抜けろ 古内一絵)

あらすじ

たった一人の女性騎手訓練生の主人公が騎手学校を卒業する場面から始まる

優秀な成績で努力家の主人公はスカウトされ卒業後、広島の鈴田競馬場にプロジョッキーとしてデビューすることとなる

ところが、この鈴田競馬場というのが曲者で・・・

厩務員が4人。一人は関西弁の兄さんに80を過ぎたと思われるご老人に昼間っからアルコール臭を漂わせているオヤジに極めつけは謎の美少年ときた。

おまけに扱う馬たちも曲者揃い

ツバキオトメは人間で言うと70代、スーパーポポロンは臆病でなにかとびくつく、ベルフォンテーヌは気難しく言うことを聞かない時がある

 

そんな中、なんとか勝ちたい主人公だが・・・

 

感想

読んでて頭をよぎったのが、銀の匙でのワンシーン。

2期の3話あたりラストの先生の語り

 

この話の本編では

セオリーよりも技術よりも本当に大事なのは、その馬の性質をつかみ、馬一緒にレースを考え、より馬が走りやすいようにしてやることだ。

このあたり

命令は受けない。でも、合図なら受ける

 

とか

馬<人間  の力関係でなくて 馬>人間

なんだなぁとしみじみ感じた

 

 

風の向こうへ駆け抜けろ

風の向こうへ駆け抜けろ

 

 

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