きみはポラリス 三浦 しをん
恋愛をテーマにした短編集。依頼されたお題や自分で決めたお題に沿って書かれた作品が本書である。全部で11編ある。
想い人を北極星に例えたのだとしたら、意訳すると「きみはずっと変わらない人」だろうか。だとすると、本書で当てはまるのが2つある。<永遠に完成しない二通の手紙>と<永遠につづく手紙の最初の一文>だ。なんだかタイトルもそっくりなこの2つの短編は同じ登場人物たちの、大学時代と高校時代を綴っている。
内容は同性愛・BLでテーマはそれぞれ<ラブレター>と<初恋>。のっけからBLを持ってくるとは!と驚いた。そして締めもBL。そういうテーマなの?しをんさん。あなたの思うポラリスってBLですか?とそれ以外ももちろんある。
<禁忌><王道><信仰><あのころの宝もの><三角関係>この辺りはちょっととっぴでわからなかった。<結婚して私は貧乏になった><共同作業><最後の恋>この辺りは好き。そして<年齢差>これが好きって人が結構いて不思議。
BLが好きな人にはたまらん想いが綴られているシーンがある。
泣けないかわりに、寺島がいいやつだってことを、ちゃんとわかる子がいつか現れるといいのになと思う。寺島の未来の結婚生活を呪うのと同じ強さで、岡田はたしかにそうも思っているのだった。不思議なことだ。こんな不思議な感情にちゃんと名前があるのが不思議だった。
<初恋>のテーマですね。あともう一つ印象に残ったのが
寺島の髪に、小さな煙草の灰がついていた。消えやすい雪に対するように慎重に、指でそっと払ってやった。
<ラブレター>のテーマです。悶絶しそうです。
あと3つ好きなところをあげます。
「俺はどっちだっていいんだ。うはねがいて、俺がいて、地球に植物がありゃあ、それでもう完璧なんだから」
<結婚して私は貧乏になった>のセリフです。婚姻届を出すことを一旦止めようかなと言った、うはねに対する言葉で、捨松のおおらかさがでてて好きです。
<共同作業>では、ロハスに取り組む彼女とその取り組んだ理由について喧嘩した後、急に積極的にロハスに取り組むようになった彼が、彼女がもういいよと止めるまで必死になっていた姿が可愛かったです。
<最後の恋>では、とにかく飼い主の麻子が大好きな春太の言葉が健気で可愛かったです。