ほどなく、お別れです 長月 天音
葬儀場・坂東会館でアルバイトをする女子大生の話
美空には姉が居た。美空が生まれる前に亡くなってしまった姉・美鳥
時折美空の夢に美鳥が現れる。そんな時決まって不思議な体験をするのだった。それというのも、美空は見える体質。つまり霊感がある。そのため場の空気が読めたり、幽霊が見えたりする。
そんな体質を見込まれて、外部で働く漆原のサポートを任されるようになる。
自らが亡くなったことの自覚がない幼い子供に、行くべき場所があることを教え、成仏するのを手伝ったり<降誕祭のプレゼント>
写真では幸せそうなのに、悲しみのオーラにまとわれてる女性の話を聞いたり<紫陽花の季節>
漆原を手伝うきっかけとなった妊婦の頼み事を聞いたりする<見送りの場所>
何も見えるのは美空だけではなかった。坂東会館と契約している寺の僧侶・里見もまた見える人だった。
しかも美空より力が強く、よりはっきり見える。
そんな里見と協力し合って、死者の成仏を助けてゆく。
里見曰く、葬式は亡くなった人のためというよりは、身内の人のためでもある。
「たとえ身内でも、亡くなった方にはもう何もしてあげられない。こうやって、後悔の念を少しでも昇華させるしかない。葬式とはそういう場でもある。」p26
その里見の意見は美空の意識を変えるものだった。
珍しい葬儀場をテーマにした作品でした。しかもスピリチュアル的。幽霊がでそうではある死の現場で、幽霊を出してしまう潔さ。
ところどころウルウルと涙を誘う場面もちらほらありました。特に印象的だったのが<降誕祭のプレゼント>で幼い子どもを亡くした両親の父が母に向けて送った言葉とその想いに感動させられました。夫婦の愛って素晴らしい。