広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

人の繋がり温かさ(ひと 小野寺 史宜)

ひと 小野寺 史宜

ひと

あらすじ

両親を亡くし天涯孤独の身となった20歳の青年の話

父親を高校生の時に事故で亡くし以後母親と2人で生活していた、柏木聖輔20歳。大学にも無事合格し法政大学へと通っていた。大学の費用について母と話し合った時、奨学金を受けることを考えたが母親が結局は借金になってしまうからと言う考えを聞いてあきらめた。その母も、大学在学時に今度は病死で失う。遺産と保険金合わせて200万を手にしたが、母のいとこに50万借りていたと言われ渡してしまう。大学はその後も通うことを考えれば奨学金をもらいながら行くしかなかったが、生前の奨学金についての考えがよぎり大学は中退することになった。

 一日の食費を500円まで切り詰めて生活し始めた時所持金55円で、腹も空腹、立ち寄った商店街で出会いがあった。惣菜屋の前でちょうど50円のコロッケを買おうとした時、後から来たおばあさんに先を越され先を譲る形になったが、残り1個のコロッケをおばあさんが買っていってしまう。所持金の金額を正直に話たところ、惣菜屋の主人がメンチカツを50円にまけてくれた。店先でメンチカツを頬張っていた聖輔、店のアルバイト募集の張り紙が目に入ってきた。仕事を探していた聖輔はその場でアルバイトに応募、後日履歴書を持参し晴れて惣菜屋のアルバイトとなる。

 

感想

コロッケが食べたくなった。人との関わりが温かくて、20歳という若さで天涯孤独になった割には凄くたくましく生きていて凄いと思った。将来の事も考えてたし、両親のことも正面から向き合ってたし。出会いって大事だなって思えた。

登場人物みな温かい人ばかりだったが、ひとり悪役がいた。主人公の母親のいとこ船津基志。金を事あるごとにたかりに来る。最初は50万、ついで葬式の手配やらの手数料で10万。あげる方もあげる方だけど、人がいいのかな聖輔は、たかりに来るほうも酷い。そんなやつこてんぱんにして欲しい。その船津のたかりから守った、同僚の映樹。普段は遅刻常習犯だが、やるときゃやるのね。って後輩をかばってくれた。後に映樹は付き合ってた女性との間に子を設けて、速攻でプロポーズ速攻で親に挨拶、という素早い行動力をみせる。

後のキーパーソンは聖輔の高校の元同級生・青葉。偶然通りかかった商店街で店番をしている聖輔に声をかけてくれたのが始まり。いくら元同級生でも声をかけるくらい親しかったかのかなぁなんて思うし、好きでないと話しかけたりしないしかも元カレと一緒の時に。それから青葉とは一緒に遊園地に行ったり、青葉の誕生日を祝ったりと交友が続く。慶応の元カレがイマイチ。青葉と関わるなと釘を刺しに来る事自体ナンセンスだと思う。青葉が自分のこと好きなら揺らがないし、っていうか君青葉から断られてるからね?見苦しいよ?

ついで父親の存在。大学を中退して、縁があって惣菜屋のアルバイトが出来た。そこで調理師免許を取ろうと考えたり、父親のルーツを探ったり。単純に凄いなぁって思えた。

大学の同級生でバンドメンバーだった剣。もなかなかいいキャラしてた。勝手に女の子連れてきたりしちゃって、元恋人の妹にも手を出したりしてたけど、根はいいヤツ。その辺が、仮眠さしてくれって言ってきた時のやり取りで分る。

2019年本屋大賞2位作品

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