地球星人 村田 沙耶香
あらすじ
家庭環境にも恵まれず、塾講師には卑猥な事をされ、自分の世界でしか生きれない女性の話。
笹本奈月小学校5年生
ポハピピンポボピア星からやってきた魔法警察のピュート(ぬいぐるみ)からステッキとコンパクト(折り紙)を貰って魔法少女になった。唯一自分が魔法少女と知っているのはいとこの由宇だけ。由宇とは小学3年の時に恋人同士なった。
この序盤だけ読めば、あぁ子供の頃にありがちな空想をして楽しんでる女の子の話なのかなぁと思うが、それが大人になってもポハピピンポボピア星のことを忘れず、尚且自分をポハピピンポボピア星人だと考えていた。そして、大人になったらなったで「工場」の部品だとか洗脳されてるだとか、いわゆる結婚して子供を持ち会社で働くということをそういった世界観を信じ切っていた。
そういうポハピピンポボピア星を信じるのは子供心に、母親から理解されず迫害を受け愛情を与えられず、姉からもいじめられ、父は無関心、という家庭環境も影響しているのではないだろうか。
特にその事がわかるのが、塾講師から卑猥なことをされて母親に訴えるが、相手にもされず逆に自分がいやらしいからそんなことをされるのだと怒られたシーン。そのため奈月は親から守ってもらえず、更にエスカレートした塾講師が性的行動をとる。その後の魔法少女として塾講師に取り憑いている魔女をやっつけるという流れ。からの塾講師の死。
アニメやマンガだと、突如悪いことをする豹変する人は大抵悪の組織の影響で乗っ取られていたりするのを、魔法少女達がやっつけて正常に戻る世界というのが定番だ。だから奈月は塾講師を殺していないかもしれない。でもだったら誰が殺したのか?警察の言う通りストーカーが殺したのか。謎が残る。
大人になった奈月はネットのサイトで、「性行為なし・子供なし・婚姻届あり」の条件でヒットした、ヘテロセクシャルの夫を探し出した。塾講師の経験が元で口がなんの味も感じなくなり、性行為にも興味が持てず出来なかったのだった。なんの干渉もしないけれども婚姻をすることで解決する諸々があると思う。親からの結婚の催促がそう。それをクリアして、子供は授かりものだから言い訳できるが、こと奈月達の場合はそうもいかなかった。夫がポハピピンポボピア星の事を信じて信じ切ってしまい、子供を作ることはおろか働くこともままならない人だった。そして仕事を辞めた夫が死にたいと言いはじめてから、段々と雲行きがおかしくなってくる。
感想
想像以上にクレイジーだった。最後にカニバリズムまで発展して若干の吐き気がした。報われないのが辛い。
結婚や出産、それは元より付き合ういや違うな男性に好意を抱かれることについて違和感を感じた。作中では「見初められる」というフレーズ。はたから見たら、塾講師に卑猥なことをされるのも「見初められる」とひとくくりにされていて違和感があった。普通自分の方にも好意があって相手に見初められて嬉しいから、見初められるって使うと思ってた。なにも性被害のターゲットにされたことに対しても見初められるって、暴力だ、それは。
普通のことに対して警鐘を鳴らす作品が得意なのかなと思った。コンビニ人間然り。