広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

手話通訳士として事件に関わっていく(デフ・ヴォイス 丸山正樹)

デフ・ヴォイス

デフ・ヴォイス 丸山 正樹

 

手話通訳士として事件に関わっていく

 

あらすじ

荒井尚人・43歳無職、前職は警察の事務員

特技の手話を活かそうとして、手話通訳技能試験を受験しに来た

結果は合格、無事手話通訳士として働くことが出来た

だが、付き合っているみゆきにはそのことを話せずにいた

登録通訳士として働き始め、最初の通訳相手は益岡という老人だった

益岡にとある理由から気に入られた荒井は、益岡の噂を聞きつけた他の利用者から利用が広まっていった

益岡が荒井を気に入った理由、それは、手話の種類にあった

日本語に手の動きを一つずつ当てはめていく手法、「日本語対応手話」ではなく、ろう者が昔から使ってきた「日本手話」を荒井が使えたからだった

日本手話は、顔の表情や眉の上げ下げ、口の形や肯いたり首を振ったりする頭の動きを取り入れた手話である。これらの表現によって、疑問形や命令形、使役形などの文法的意味をもたせる事ができる。

そんな荒井のもとに公判の通訳、法廷通訳の依頼が来て・・・

 

===

感想

知らないことが多かった。

耳の聴こえない人を、ろう者と呼ぶことや、手話の種類が2種類あること、両親ともにろう者で聞こえる子供のことをコーダと呼ぶこと。

 

前半部分はろう者と手話について知ることが多く、後半部分でミステリでぐいぐい読ませてもらった。続編もあるとのことなので楽しみ。

 

ここからネタバレ

 

 


題名のデフ・ヴォイスは、Deaf=ろう者のことを指している

だから直訳すれば、「ろう者の声」

確かに、事件の容疑者がろう者であったり、手話通訳講師の素子の存在、コーダである主人公荒井、過去の事件で冤罪の罪に問われたろう者の存在

でも多分、題名は真犯人である輝子の姉幸子の声だったのかもしれない

性的虐待を受け続けて、言えなかった、訴えれなかった幸子の声

それを妹である輝子だけが知ってしまった。だから輝子は行動に移した。でもそれだけが致命傷になったわけじゃなかった、たまたま酒を飲んでいて血が止まらなかったから亡くなっただけで。

でも息子もまた、幸子を探し出して親と同じ行為を幸子に与えて脅して、なんてやつ

幸せに暮らしていた輝子の生活が脅かされるかと思い、息子を殺害した幸子
負の連鎖。助けを求めるための手話が、声が出せなかった二人。

それがデフ・ヴォイスなのではと思う

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