広く浅く

広く浅く

本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

江戸の火消し組(火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 今村 翔吾)

火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 今村 翔吾

火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

あらすじ

ぼろ鳶組と呼ばれるようになる火消し組の物語

5年前まで火消しとして消火活動をしていた源吾。火喰鳥と呼ばれたが今は妻の深雪とともに貧乏暮らしをしていた。そこへ出羽新庄藩から突然仕官の誘いが来る。かつて火喰鳥と呼ばれていた火消しの才能を買われてのことだった。というのも戸沢家ではある事情により火消組織が壊滅し、その再建を源吾に頼みたいとのことだった。しかも200両と言う少ない額で。一見多いようにも思える再建費用だが、火消メンバーを雇ったり火消道具を揃えたりするとギリギリの予算だった。その上有名にもなって欲しいと言われていた。というのも、番付遊びが流行っており、火消もその対象になっていた。人気の火消は揃いの羽織を着て町人の目を集めていた。だが戸沢家の予算では揃いの羽織を仕立てることも叶わなかったため、みな思い思いの羽織を着ており、中にはつぎあてをしている物もいた。そういう衣装を見た町人が言ったのが、ぼろ鳶という言葉だった。はたして源吾はぼろ鳶組を有名に出来るのか・・・

 

感想

良かった。笑いあり涙ありの読み応えたっぷりだった。その衣装からはじめは受け入れられなかった新庄藩の火消し組が、回を重ねることでぼろ鳶組と愛称で呼ばれるようになり、最終的には町の人気火消しになるまでを描く。

源吾が何故火消しを辞めて貧乏暮らしになったのかは、妻・深雪のとの結婚に遡る。結論を言ってしまえば、深雪に恋心のあったライバルが因縁をつけて深雪の父の家が家事になった時、源吾がその場に駆けつけられないように乱暴して結果深雪の父が火事で死んでしまったことだと思う。深雪の父は病に侵されており、火事て無くても危うかったが、源吾はそれ以来火が恐ろしくなってしまい火消しを辞めたのだった。

火を怖がっていた源吾を諌めたのは、戸沢家に仕えおりまた源吾の世話係だった左門だった。彼が普段の温厚らしからぬ威勢で源吾を叱り飛ばし、また火喰鳥だったころに見かけたあの面影はどこへ言ったと言い、そしてぼろ鳶組のメンバーを集めたのは誰だ?っと涙ながらに訴えた。それが響いて源吾はまた火消しに返り咲いたのだった。

そして江戸に火をつけて弄んでいた狐火という放火犯から町を守るため、ぼろ鳶組が活躍する。そして、町人たちを河を渡すために雨戸や板堀で橋を作り、下でぼろ鳶組が支えて上を町人が渡るシーン。力尽きようとした時に現れた、助っ人に涙が止まらなかった。

狐火の犯人・秀助が何故放火犯となったのか、というエピソードが不憫で悲しい。

忘れてならないぼろ鳶組のメンバーの活躍もあった、このシリーズ通しての見どころとなるだろう最初のメンバーを引き入れる話でもあった。力士の寅次郎はその力を見込まれて、星十郎は天体の知識を買われて風読みに、軽業師だった彦弥は身の軽さを買われて纏持ちに、後もとから居たメンバーに物覚えが良い新之助。彼らの力が合わさった時、それに他の組が江戸の一大事に息を一つにして消火に当たるシーンも見どころのひとつと言えよう。

注目記事