広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

図書館の存在意義(おさがしの本は 門井 慶喜)

おさがしの本は 門井 慶喜

おさがしの本は

あらすじ

とある中央図書館のレファレンスサービスを担当している男性が主人公

1.森鴎外の別名森林太郎について探している本があるという女子大学生の話
2.閉館する分館図書館をよく利用していたという男性からの、赤い富士山が表紙の絵本を探して欲しいという依頼
3.図書館存続に反対派の新任・副館長によるレファレンス質問。これに答えられなければ図書館存続の危機!?
4.亡くなった夫が所持していたという、早川図書20冊の行方
5.図書館存続について主人公が議会にいて存続させるための論説をする話

以上5編からなる本作

 

感想 

レファレンスサービスとは、市民からの質問・捜し物について図書館員が答えるサービスのこと。ただし、秘書のように図書館員を扱うことは出来ないし、宿題の答えも教えられない。

で、この本のレファレンスがちと硬い。まぁ仕方ないかも知れないけれど、もう少し噛み砕いたテーマだったら読みやすかったのになぁ。なかでも副館長からのレファレンスが一番ややこしい。答えは驚くほど有名な本だったから、ここまでややこしく質問を考えられるのかと副館長の博識さを実感する。

あとは図書館存続について。分館を閉鎖するというのはあんまり聞いたことないけど、蔵書400冊程度の小さな学校の図書室みたいな分館ならひょっとすると閉鎖されるかもしれない。けれども、分館がなくなればその分その地域の住民たちは離れた図書館まで行かなればならないし、足をもたない人たちにとっては不便を強いられる。今回閉鎖されたのは児童書が中心だったから子供たちの図書館が無くなるということ。作中で副館長は無料の貸本屋だとか休憩所だとか言いたい放題言って、それなら街の本屋や古本屋がその役目を果たすだろうと半ば強引に言っているが、図書館の存在意義は貸本屋ではない。知の拠点として、様々な図書を収集し提供することで利用者の役に立っている。辞書や辞典類、古典、全集なんてその辺の本屋や古本屋にはあるかもしれないが、ラインナップが充実していないだろう。それに司書が図書館には存在し、図書館の道先案内人として管理人として存在するのである。それを中央図書館の財源をカットするとは何事であろうか。知の拠点としての存在意義がなくなってしまうではないか。確かに、貸本屋や休憩所や勉強スペースに成り代わってしまうけれども、調べ物なら本屋とはあまり聞いたことがない。レファレンスサービスで膨大な蔵書から利用者の求める答えを導き出すのが司書の役目である。実際レファレンス・調べ物用に辞書類・目録などは館内利用としているところがほとんどである。本を貸し借りするだけで図書館を利用しているひとには馴染みもないはずだが、レファレンスは図書館の重要なサービスの一つであり、図書館の役目の一つでもある。図書館はひっそりと重要な役目を負っているのである。

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