インド倶楽部の謎 有栖川 有栖
国名シリーズ第9弾。犯罪学者・火村と作家・アリスコンビが贈る本格ミステリ
神戸の異人館、インド亭で第二日曜日に開かれる例会。ナイトクラブ<ニルヴァーナ>を経営している間原郷太が主となり知人たちを招いていた。
その知人たちの繋がりというのが前世にあった。輪廻転生を信じる彼らは、前世のインドで恋人であったり友達、従姉妹、と前世でなんらかの繋がりがあった人々が集まっていた。
- 地方の藩王に仕えていた武人・アジャイ・アラムが前世の坊津理帆子、現世では私立探偵をしている
- アジャイの従姉妹ラダ、現世ではヨガのインストラクター井深リン
- アジャイの遊び友達ナシーム、臨床心理士・佐分利栄吾
- アジャイの幼馴染バジブ・弦田真象、ミュージシャン
- アジャイの兄チャンドア・加々山郁雄、プロモーター
- 領主のところに出入りしていた商人・シン、間原郷太
- アジャイの許嫁シャンバビ、間原洋子
以上7名が参加した例会での占いがきっかけとなり殺人事件が起こる。
占い「アガスティアの葉」には人々の運命が書き記されているという。占いに参加したのは次の3人、加々山、坊津、間原郷太。自らが死ぬ日付を自分には分からないようにしておしえてもらった、加々山と坊津だったが・・・
輪廻転生をテーマにした作品で、出てくる登場人物の心頭っぷりにはついていけなかった。が、やっぱり本格ミステリは面白い。本作がシリーズ9作品目で8作品目を読んだのが13年くらい前。時が経つのは早いと見るか遅いと見るか。次作10作品目となる「カナダ金貨の謎」も発売され、シリーズが完結となるのはまだ先だと有栖川先生もおっしゃっている(リンク)ので引き続き楽しみだ。
p154辺りでアリスが自身の小説のタイトルについて言及しているのも面白い。現実世界とリンクしているので「あ、これまだ読んでない」とか気付いたり、「ふーん、こういう理由でこのタイトルをつけたんかー」と裏話がアリスによって語られる。
輪廻転生について火村は現世一筋だしアリスも、前世で悪いことをしたから現世で早く亡くなったりするという佐分利の話に反論する場面もあった。わりかし二人の意見は一般よりなんだなーと思った。
あとは、野上刑事が温泉宿に単身向かって調査をしていたシーンで、火村について
こう言っている場面があった
犯罪学者やなんて、まどろっこしい。あの男は、なんで最初から刑事にならんかったんや? p230
と1人呟いている。
思わず笑ってしまった。野上のいうことにも一理ある。フィールドワークと称して事件を解決しているから。
でもな、刑事は犯人を捕まえて事件を解決する仕事であって、犯人の心にせまった問題をクローズアップする職業ではない、「人を殺したいと思ったことがある」という火村。その殺したいと思う心理を犯人から読み取ろうとしているのかもしれない。