天翔る 村山由佳
あらすじ
父親に連れて行かれた競馬場で、馬を見たことがきっかけで馬に興味を持った小学生・まりも。
父親をバカにされたことがきっかけで、周りの女子からいじめにあい不登校になる。
とある朝、学校に行こうとして道端で気分が悪くなったまりもを介抱したのが、近くに住む看護師の貴子だった。
そのことがきっかけで貴子とまりもは本当の姉妹のようになる。
祖父母と父親と暮らすまりもにとって無くてはならない存在にまでなった。
そんなある日、父親が建築の現場で風に煽られ足場から転落、そのまま亡くなってしまう。
落ち込むまりもを気遣って、乗馬クラブに通う貴子がまりもを乗馬に誘う。
<シルバー・ランチ>のオーナー志度銀次郎が、まりもに馬の乗り方世話の仕方を教える。そこでまりもの持つセンスに気付いた志度はある提案をして・・・
というのが第二章までのあらすじです。
500ページを超えるボリュームで、この後芸能プロダクションの事務所社長が志度にエンデュランスというレースで使う馬を調教して欲しいと頼みに来ます。
エンデュランスは、100マイルの距離つまり160kmを地図や矢印を手がかりに完走するレースのことである。ただ早ければいいという訳でもなく、途中設けられる獣医検査をパスしないといけない。つまり、馬の体調を気遣って無理なレースをする走者は失格になるというレース。レースを完走した時、馬の状態が一番いい1頭を選んで与えられる『ベストコンディション賞』という名誉ある賞もある。
エンデュランスに並々ならぬ情熱を持つ社長。とそれに挑戦することになったまりもと相棒・サイファの絆。
感想
このベストコンディション賞があるという、エンデュランスの精神が好きです。
この精神にのっとって、まりももサイファと共にレースを戦います。
また作中には『馬の祈り』という英語の文が載っているのですが、これもまりもとサイファ、志度の調教方針にのっとっているのではないかと思います。
ふたりとも馬のことを第一に考えていて、馬の気持ちを理解している。それが読んでいるとよく分かる。
貴子も本職は看護師ですが、過去にあった心の傷が、乗馬をしているときには頭にないことからよくクラブに顔を出し、エンデュランスにも参加しています。
それはまりもの精神的支えにもなっており、非常に重要な人物でした。
伏線だったのか散りばめられた事象が、最後は読者の想像におまかせするとばかりに結末が書かれていないことが少し残念です。
でも考えてみればこれはまりもの物語であって、脇役たちの物語ではないのでそういう展開にしたことも訳があるのだろうと思って納得しています。