広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

一人の女性の再生の物語(エンディングドレス 蛭田 亜紗子)

エンディングドレス 蛭田 亜紗子

エンディングドレス

あらすじ

エンディングドレス、つまり死装束。自らが葬儀のときに着る人生で一度きりのための服

『終末の洋裁教室』はエンディングドレスを作るための洋裁教室

夫が亡くなり、自らも命を絶とうと着々と準備を進める主人公・麻緒

首吊用のロープを買いに手芸店に寄った所目に入ってきた洋裁教室の案内

偶然撮れたチラシの写真から、洋裁教室に通うことになった

洋裁教室では真っ先にエンディングドレスを作るのではなかった

まず与えられた課題をこなして、頃合いを見計らってエンディングドレスを作るのだという

講師の小針ふゆ子はそう告げた

小針から与えられた最初の課題、「はたちのときにいちばん気に入っていた服はなんですか?」を取り掛かる麻緒とおばあさん3人

課題に取り組むうちに、生きることについて活力を得ていく麻緒と3人のおばあさんのそれぞれの服にまつわる思い出話、講師の過去が明らかに

 

感想 

自ら命を絶とうと、淡々と準備を進める麻緒に、ヒヤヒヤしながら読み進めていった

最愛の夫弦一郎を病でなくし、子供は授からず出来た子供は流産し、また自ら堕ろした。自責の念。

仕事もやめ、コンビニのアイスで食いつなぐ日々

洋服も、SNSも整理して、死後はドナー登録出来るように保険証に丸をし、死ぬためのtodoリストにチェックを入れていく

あぁ誰かこの人を救ってくださいと、読みながら辛かった

でも同じことを弦一郎がしていたことを知って、変な所で似た者同士だなって

結婚して姓が変わる妻のために復氏届を残していた弦一郎。切なすぎやしませんかこれ

 

そんな麻緒も洋裁教室に通うことによって、つまり一つ物を自らの手で完成させていく喜びを知っていき、段々と生きるチカラが目に見えて分かるようになっていく

その集大成

小針からの課題「自己紹介代わりの一着を縫いましょう」では、今まで受け身だった服への提案も自ら進んでこういう風にしてみたいと提案し作り上げた一着

 

小説ならではで、この人がどういう人生を歩んできたかとか、夫とのなれそめは、

そもそも夫がいるのかだとかが全くわからない中で読み進めていく感じがドキドキした

 

物を作り上げていく達成感は分かる。仕事や日常では得難いもの。

一人の女性の再生の物語だった

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