院内カフェ 中島たい子
病院内のカフェで働く女性を取り巻く出来事
チェーン店のコーヒーショップで土日だけ働く、主婦で作家の主人公・相田亮子
今日も店には個性的な客がやってくる
ここのコーヒーはからだにいいのか?と毎回尋ねる、いつもおなじ黄緑のヤッケを着てる男性客・ウルメ
病院の研修医で体毛が濃いことから名付けられた・ゲジデント
入院していると思われる旦那・孝昭と、妻・朝子。何かの諍いでソイラテをぶっかけられた旦那。
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主人公の亮子はなかなか子どもに恵まれず、どこも悪いところはないのに授かれないことを悩んでいた
不妊治療をすることに抵抗のある夫が、落ち込む亮子の様子をみて不妊治療をしてもいいと口にする
でも授かれないこともまた自然であるという話になり、なごやかな雰囲気に
いい関係だよね亮子夫婦。自然酵母でパン屋をしている旦那も両親を薬漬けの上に亡くしていて、薬に頼って無理やり延命することに、嫌な感じを受けていてそれで不妊治療をすることも反対してた。だけど、カフェ定員の村上が風邪をひいたときも薬に頼らず治すという話から、だけど花粉症の時は薬に頼る。つまり、自力で治癒できる能力が備わっているから、風邪の時は薬に頼らないけれども、花粉症は本来なら反応しなくていいものに過剰反応している人間の機能が壊れているから薬に頼る。だけどもその壊れている機能も、何かの時に役に立つバックアップ機能じゃないかと村上は考えていた。という話を聞いて、じゃあ俺たちもそのバックアップ機能なのかもな、と言う旦那に胸が熱くなった亮子。
そうなんだよな、何に問題ないのに授かれないことで、ひょっとしたら自分は欠陥品で自然界から必要とされてない存在なのかもしれないってネガティブになっちゃうよ。
そこでお前が悪いんだって責めたりせず優しく接する旦那は優秀だと思う。
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あと印象に残ったのは、孝昭と朝子の話。
特に朝子が孝昭に手紙を送って、メールで返事を送るのだけどその内容に感動した。自然と涙が溢れてきて、何に涙したのかわからないけど心の琴線に触れた。
ソイラテを旦那にぶっかけて、その後白い封筒を持参するって場面でいよいよ熟年離婚かなってヒヤヒヤしたけれど、実際旦那にあげた白い封筒は手紙だったのだから。してやられたかんじ。いい意味で。
長年の両親への介護で自分を犠牲にしてきた亮子。だけどその犠牲はまじめだったからかもしれない。それに自分でも手紙で言っていたけれど、依存心が両親にあった。それに気付けたのは、やはりカフェで同席した男性からの言葉がきっかけだったと思う。犠牲にならないようにって。
ただ、寄り添って何かあったときには力になれるようにそばにいる。難しい。思わず手を出してしまわないようにするって。でも朝子は、そういう選択をした。カフェにはいるけど、入院中の旦那の世話は自ら率先してあれもこれもとしてあげない。今までの朝子ならそうしてきたけど、変わったんだ。
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最後のサンタクロースからのプレゼントと、1万円を置いていった人は誰だろう
個人的にゲジデントじゃないかと、ひっそり思ったり。
粗野に見えるけれど、やるべきことはしっかりしてるし、カフェの常連だったし、
カフェを怖がる元がん患者のウルメにあそこは怖いところじゃないよとクーポンあげてたし。
読了感はホッとするおすすめの一冊でした。