広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

震災を題材とした、少女と育て親の物語(翔ぶ少女 原田マハ)

翔ぶ少女 原田マハ

([は]9-1)翔ぶ少女 (ポプラ文庫)

あらすじ

阪神淡路大震災で両親を目の前で亡くした、3兄弟(イッキ、ニケ、サンク)

主人公のニケは震災で右足を負傷し、以後不自由な身体になってしまう。

震災のあった時、ニケ達を助けてくれた心療内科「さもとら医院」の院長・通称「ゼロ先生」に養子として引き取られた3兄弟。

右足が不自由なうえに両親を亡くしたニケは、学校で同情され冷たくはされないものの本当の意味での友人が居ず居場所がなかった。だが、ゼロ先生と一緒にカバン持ちとして仮設の家庭訪問に同行する金曜日は毎回楽しみにしていた。それというのも、お年寄りがニケを最初は不審そうにしていたが回を重ねるうちに歓迎されるようになったからだった。

ゼロ先生は男で一つで不器用なりにも頑張って3兄弟を育ててくれていたが、こと料理になると実家がパン屋をしていたニケのほうがよっぽど上手という結果になり、ゼロ先生の気持ちも考えると料理を自分たちがすると言い出せなかったが兄のイッキがゼロ先生のぎこちないでも愛情こもった料理をする姿がしのびないと手伝いを申し出たのであった。それからというもの、兄のイッキとニケで商店街の店で調理法を聞いたりレシピを教わるようになる。

そうして年月が過ぎニケは小学6年生になった。

知り合いだったおばちゃんが、新しい土地で誰も知られぬままに孤独死してしまったのがきっかけで、ゼロ先生達は復興住宅を訪問する「復興訪問」をしていた。そこに協力していたNPO法人の片山。息子の陽太も一緒に来ていた時、初めて陽太を見たニケは「とくん」と胸の高鳴りを感じ恋に落ちていた。はじめての恋。大好きな気持ちが高まった時、ニケの身体に異変が起きる。

 

感想

ショッキングな震災を題材にした、少女と育て親の物語です。

瓦礫の下に置き去りにしなければならなかった母、最期の言葉

リアルすぎて目に涙が滲みます

そこへ助けに来たゼロ先生。母親から託された3兄弟。

母親と離れたくない彼らを叱咤する。自らも妻を置き去りにしなければならなかった状況で3兄弟を託された。想像を絶する心境です。

そこから仮設に行くまで、体育館で過ごした時間。

ニケはゼロ先生の息子によって専門外ながらも手術を受け、無事に助かります。

生きるか死ぬかの瀬戸際で、助ける側のプレッシャー。それでも助けたいという想い。

仮設に移ってからも、ゼロ先生は休む間もなく働き続けます。薬を飲みながら。この時は、激務に追われてそれでなんらかのビタミン剤でも飲んでるのだと思いましたがそうではなかった。

心を尽くして、3兄弟を育て上げ守り抜いたゼロ先生。

そんなゼロ先生を間近で見ていたニケにも志すものが出来ました。

はじめての恋で、起きた異変はのちのゼロ先生を救うきっかけになるものでした。

異変はファンタジーなんですが、それが起きた所以はとても純粋な気持ちでした。だからあの純粋な形になったんじゃないかと今書きながら思います。

異変ではなくあれは奇跡じゃないでしょうか

だとすればあれがとても素敵な出来事だったのだと思いました。

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