広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

後味の良いさわやかな夢のある物語(水曜日の手紙 森沢 明夫)

水曜日の手紙 森沢 明夫

水曜日の手紙 (角川書店単行本)

あらすじ

水曜日にあったことなどを水曜日の郵便局というところへ投函すると、同じ水曜日の郵便局へ投函した誰かからの手紙が受け取れるシステム。相手に送る時は匿名で専用の便箋に内容を、本名と住所を書いて送る。

 

そういうシステムがあることを人づてで聞いた2人の主人公がそれぞれ手紙を書く。その内容は、現実とは全く違う自身の夢を描いた妄想手紙だったり、夢にあこがれてはいるものの現実では友達に嫉妬したりしてる主人公が素直に自分の実情を書いた手紙だったりする。

それを水曜日の郵便局の局員が受け取り、内容を確かめてランダムに送りてから受け手へ配送する。

郵便局の局員にもまた、物語があり・・・

 

最初の女主人公の話では、恵まれているように見える友達に上から物を言われていると感じてカッとなりつ言ってしまった言葉がきっかけで疎遠になる。夫の両親とも上手くいってなくて、あれこれ言われるがままになってしまう。全部自分のせいにされてしまうストレス。唯一のストレスのはけ口はスケジュール帳に書く毒吐きノートだった。でも、友達と話したことがきっかけで、彼女は変わろうとする。このままではいけないと

 

感想 

若干、この夢に向かって進んでいくというどこか若々しさを感じるエネルギー、現実はそう甘くはないことは百も承知だろうに、夢に向かって進もうとする話。

どこか、綺麗事ですませられてしまいそうな小説だから、フィクションだから、では済まされなさそうな。でも彼女たちの今よりは良くなっていることが見て取れてしまうから、今後を応援してしまいたくなった。

 

最初、女主人公【井村直美の空想】と男主人公【今井洋輝の灯台】別々に短編があり、おそらく序章だからその主人公の人となりがわかる文章が書かれています。ただ、この2つが、苦しくてもがくような内容だったのでこの先どうなるかとヒヤヒヤしました。続く郵便局員の【光井健二郎の蛇足】ではこの【井村直美の空想】と【今井洋輝の灯台】を受けて、二人の手紙を読んだ郵便局員の父子家庭における娘の進学の問題がクリアになっていきます。この章からさわやかな夢のある物語になっていき、読了感は後味の良いものになりました。

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