広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

壁にぶつかった人に贈る(手紙屋 喜多川泰)

手紙屋 喜多川泰

「手紙屋」

あらすじ

就職活動を控えた男子大学生と手紙屋と呼ばれる人物との往復書簡

大学生になって一人暮らしを始めた主人公・西山諒太。自宅近くに喫茶店を見つける。その名は「書楽」。『横浜で、一人静かに書を楽しむ、あなたの書斎をご用意しました 書楽』という看板が示すとおり、書楽は会員制で一人の利用に適している書斎のような空間を提供している喫茶店。ひとり用の机に快適な椅子、ちょっと高級な文房具に囲まれているそんな空間。自分の書斎を持つということに憧れを持っていた主人公は書楽の利用者となる。

そして諒太の誕生日が近づいたある日、贈り物があるとハガキが送られてきた。引換券を持って書楽に行くと、誕生日を迎える人にプレジデントデスクと呼ばれる席を使っても良いと言われたのだった。そこはまさに社長席、ひとり用の机よりもちょっと長い机に社長が座るような大きめの椅子いかにも高級そうな備品。そこを諒太は”王座”と名付けていた。そこを使えると知って喜ぶ。いざ社長席に座って読書をはじめて見るも、まわりの備品に気を取られ中でも「手紙屋」という広告に目を奪われたのだった。

 

感想 

理想論や哲学書みたいなことを言っているけど、逐一うなずける話ばかり。作者の人がこの本は就職活動をしているような若い読者に向けて書いたと言っていたが、他にも壁にぶつかった人や何かを目指している人に読んでもらったらきっと何か糸口が見えるのではないのだろうか。

いいなぁ書楽。近くにこんな喫茶店があれば常連客になったのに。一人で落ち着ける空間が、家以外にあれば素敵だと思う。それに喫茶店なら美味しい珈琲とか軽食も出るだろうし、考えただけでそこは天国。

 

本著の中でも印象的なのが次の文章

「でも、忘れないでください。どんなに大きな壁であっても乗り越えられないものはありません。一見無理なように感じても、自分から切り捨てたり、途中であきらめたりしない限りは乗り越えられるものなのです。別の言い方をすると乗り越えられる壁しかあなたの前に現れてこないのです。」p188 

よく見かける内容だと思った。乗り越えられるから神さまはあなたに重い荷物を背負わせるのです。みたいな。最初から荷物なんて軽いほうがいいじゃないかと今まで思っていたけれども、本著を読み終わってみて新たな考えが頭に出てきた。それは、壁を乗り越えた後に自分がどれだけ成長したとか夢に近づくとかなんかそういうことが壁として出てくるのであって、乗り越えないと夢に近づけないのではないだろうかという考え。

 

最後に、手紙屋の正体があの人だったとは素で驚いてしまい、声まで出してしまった。それくらい意外だった。ノーマークと言っても過言ではない。サクセスストーリーみたいな内容ではあったけど、得るものもあったんじゃないかなと思えた。

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