広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

古民家が愛おしくなる(菓子屋横丁月光荘 歌う家 ほしおさなえ)

菓子屋横丁月光荘 歌う家 ほしおさなえ

菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)

あらすじ

家の声を聴くことが出来る大学院生の遠野守人。

担当教授の頼みで川越の菓子屋横丁にある築七十年の古民家に住むことになる。そこで古地図を管理する管理人として。

活版印刷三日月と同じ川越が舞台。

ファンタジーではないけれども、家の声を聴くことが出来るという点が唯一ファンタジーさを引き立てる。

家も長く経てば何かが宿ると聞いたことがある。付喪神とかと似た雰囲気。大事に守りついできたからこそ生まれる家の声。古民家が愛おしくなるそんな作品。

 

第一話「歌う家」

守人が川越に引っ越すまでの経緯と、何故川越の古民家なのかという話。守人は現在、通学に往復で4時間かかる千葉の木更津にある祖父母の家に一人住まいをしていた。大学院の担当教授・木谷から呼び出しを受け話を聞くと、川越の古民家に管理人として住み込まないかと誘われる。木谷の知り合いで川越の古民家を相続した人が家を改修工事して住めるようにしたが借り手が見つからず困っていたという。木谷の父が古地図をコレクションしていたこともあり、ならば古民家の1階を地図資料館にしてみたらどうかと話が持ち上がり、その家の管理をしながら住める人を探していた。そこへ通学に困っている守人に声がかかったのだった。引っ越しの前に一度下見をしようと、木谷と家の持ち主島田と守人は会う約束を取り付ける。実際家に入ってみたら守人には歌が聞こえたのだった。

第二話「かくれんぼ」

地図資料館として営業していた古民家改め「月光荘」に近所で喫茶店を経営している安藤が客を連れてやってくる。客の一人は川越で珈琲豆専門店を営もうとしている佐々木と、デザイナーの藤村。佐々木の受け継いだ古民家を月光荘と同じように改修工事をして使えるようにしようと、参考がてら来たのだった。安藤は2人に「旭舎文庫」も見せたいと話し、その場に居た木谷と守人同じゼミのべんてんちゃんも一緒に行くことになった。旭舎文庫では当時駄菓子屋で使っていた物をディスプレイするというデザインを取っていた。それを見た佐久間がインスピレーションを得て藤村が倉庫にある和菓子屋で使っていた木の箱に豆を入れたらいいのではと提案した。そこで一同がどんなものがあるのかを佐久間の引率で、佐久間が相続した建物まで赴いた。そこで守人が聞いた声が『もういいかい』『まあだだよ』だった。はたしてこの声の意味することとは?隠されたお宝が蘇る。

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