広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

未熟な恋の恋愛小説(じっと手を見る 窪 美澄)

じっと手を見る 窪 美澄

じっと手を見る (幻冬舎単行本)

あらすじ

恋愛小説

介護福祉士の日奈と海斗。付き合ってた二人は日奈の方から別れを言い出して別れたが、海斗のほうが日奈に未練がありまたほっておけないので別れてからも日奈の家に海斗が出入りしていた

ある日、専門学校の校長から卒業生のインタビューに答えてほしいと言われ嫌々引き受ける日奈と海斗

日奈を取材したのは宮澤という男だった

都会の洗練された雰囲気を持っている宮澤に惹かれる日奈

二人がそういう関係になるのも時間の問題だった

 

感想

冒頭から、身体の交わりが描かれて、年上の大人な男性に惹かれた日奈が宮澤によって開花されていく(身体の方面で)といっても終始その描写があるわけではない、2週間に一度庭の草刈りをするという名目でやって来る宮澤と抱き合うだけの日々

彼氏がいると言っても、海斗が好きで付き合ったわけではない。日奈の唯一の肉親の祖父が亡くなり、甲斐甲斐しく世話を焼く海斗に、何を思ったか自分から付き合って欲しいと言い出した。人恋しさ、自分を好いてくれる手短な人間をそばにおきたいとさみしいと思う気持ちがそうさせたのだろうか。だからか、二人は日奈のほうから別れを告げる。

ふたりともはじめての彼氏彼女だった。抱き方なんて日奈がはじめてだろうからそりゃ年上の男のほうが経験値あるから気持ちもいいだろう。それで日奈は宮澤のことが好きになったわけではないけど、実際それが大半を占めるわけで。軍配が宮澤に上がるのも仕方ない。だけども、激しい感情だけが恋愛じゃない。おだやかなゆるやかな感情も愛であり、それが大事だということに気付くには二人はまだ若かった。

だから、海斗も日奈からこのままではいけないと離れて同僚の畑中と暮らすようになったり、日奈は日奈で宮澤のことを忘れられず追いかけてしまうという行為にでる。もちろん宮澤には妻子が居た。別居中だが籍は入れてある。女にだらしのない宮澤、だからほいほい若い女の子の日奈に手を出してしまうのだろう。なにか特別な存在だと自覚しておきながら、妻と別れる気もなく日奈と結婚するわけでもない。無責任な関係を甘んじて受けていた。ムカつく野郎だ。

紆余曲折を経て、日奈と海斗はそれぞれ一人になって、元居た場所へ戻り元鞘に戻る。ここで小説だなぁと思うのが、ふたりともフリーだったこと。現実ならどっちかが誰かと宮澤でも畑中でもない誰かと結婚しそうだ。けど、この小説はふたりの縁、腐れ縁かな?とも思える縁で繋がる。そしてようやく日奈は、「そばにいてほしい」と気持ちを海斗に伝えることが出来たのだった。

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