広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

色々詰まった短編集(カナダ金貨の謎  有栖川 有栖)

カナダ金貨の謎 (講談社ノベルス)

カナダ金貨の謎  有栖川 有栖

 

国名シリーズ第10弾

今作は表題を含む繋がりのない短編集

 

あらすじ

船長が死んだ夜

火村のフィールドワークの一環で兵庫県を訪れていた、火村とアリス

宿屋でニュースを見ていたら、近くの村で発生した殺人事件の報道がされていた

寄ってみると、船長と呼ばれていた男性が何者かに胸を刺されて死亡したとのこと

容疑者は被害者小郡晴男と不倫関係になっていたと噂される橘美潮と、小郡を慕う槌井須美代、美潮の夫の3人。3人共にアリバイなし。

不自然に剥がされたポスターと籐の椅子。これらから導き出した火村の答えとは

 

エア・キャット

ミステリ作家浅井小夜子と二人バーでトランプマジックを披露してもらってたアリス

小夜子がトランプに書いた猫から、最近の火村の様子を尋ねられた

そう言えば最近猫にまつわる事件があったという

被害者が夏目漱石の「吾輩は猫である」を愛読しており、亡くなった猫をエアキャットとして飼っていたのだという

被害者は何者かに殴打されて死亡した。玄関は施錠されていたが裏口は開いていた状態で

被害者の殺害された時刻が不明な中、火村が被害者の本棚から一つの本を見つけたことで事件は解明に至る

 

カナダ金貨の謎

犯人による記述形式で語られる、倒叙

なので犯人は最初から分かっていた

被害者がいつも身につけていたカナダ金貨のネックレスが無くなっている状態で発見されてた

第一発見者の恋人・芳原彩音が疑われているのではないかと、以前いとこが世話になった火村を頼ってきた

火村とアリスは彩音と被害者の後輩太刀川から話を聞く

 

あるトリックの蹉跌

火村とアリスがはじめて出会った場面の短編

アリスが講義中小説を書いていると、横から声をかけられた

それが火村だった。火村はアリスの書いている小説の続きを知りたいようだった

小説を読ませてもらったお礼におごると言われ、食堂のカレーをごちそうしてもらったアリス

もう一度読ませて欲しいと、頼まれ煙草を吸いがてら休憩スペースで待つことに

そこでアリスは火村に犯人を言い当てられて・・・・

 

ロッコの行方

火村がお気に入りの喫茶店で論文を読んでいると、学生達がトロッコ問題を言い合っているのが聞こえた

ロッコ問題とは、線路の先に5人の作業員がいて自分は分岐点の切り替えポイントに居る

もう一方にもひとりの作業員がいる。そこへ暴走するトロッコが近づいてくる。大声で叫ぼうにも両方とも離れすぎていて声は届かない、あなたならどちらの犠牲を選ぶかという問題

火村は学生に聞かれて、ひとりを犠牲にするという少ない方を選んだが・・・

そこへ大阪府警の鮫山警部補からメッセージが、事件の依頼だった

 

===

感想

やっぱりミステリっていいな。ワクワクするというか読んでて楽しい

 

今回短編集だったのが意外だったけど、色んな話が読めて嬉しい

特に、「エア・キャット」と「あるトリックの蹉跌」が好き

エア・キャットで最後に火村が、まだ見ぬ猫の名前を決めているというエピソードが、可愛くて好き

あるトリックの蹉跌は、はじめて出会った二人の話が丁寧に描かれていてこちらも嬉しい限り

今まであんまりこんなに書かれたこと無かった気がする

 

表題のカナダ金貨の謎、は珍しく犯人側からの記述だった

これも何パターンの内の一つだろうなー

なんでカナダ金貨を取ったかというと、のちのアリバイ工作に必要だったから取った

でもそれが逮捕の決め手になるなんて滑稽だわ

演技した火村もナイスというか

 

ドラマで斎藤工窪田正孝が演じてた印象が頭に残ってて

話すふたりのイメージが彼らに固定されつつあるww

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