広く浅く

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本の感想。ジャンルは文芸・ファンタジー・SF・ミステリ。ほのぼの系が好き

伏線回収が見事な恋愛小説(アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎)

アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎

アイネクライネナハトムジーク

 

映画化されるというのであらすじをみてみたら読んでみたくなって読んだら
予想以上に良かった

 

恋愛小説なのだが、伊坂幸太郎らしさつまり伏線の回収が実に見事だった

 

いくつかの短編で成り立っていて、それぞれ登場する人物は異なる
だけども最終章に向かって回収されていく伏線の実に華麗なことか
伊坂さんは伏線の回収に定評があるみたいで、それも納得
読み終わった後爽快感がある

 

ちょっと登場人物が多くて、あの人がこうして今こうだからあの伏線がここで回収されて、と頭を使ってしまう
普段、登場人物の名前を覚えるのではなく、その人の特徴で読み進めていくタイプの人間だったので、途中であれっと思うようなこともしばしばあった

 

物語の中では『ライトヘビー』が一番好きかもしれない
美容師の美奈子がお客で友達の香澄から弟を紹介され、電話のみで繋がっていくという話
当たり障りないのない世間話や仕事の話なんかを、一見すると友達みたいという気さくさで、定期的に弟の学から電話がかかってくる。会ってみたくはならないのかという友達に、不思議なことにそうはならないという美奈子。おまけに定期的に1,2ヶ月ほど連絡が取れなくなる時があるという。仕事は事務職だという学だが・・・

映画のあらすじでは声しか知らない男性に恋をする女性として美奈子が紹介されていた
確かに、電話だけで会ってないから正しいけれど、いつの間に恋したんだろうと思い返してみたら、そう思われるシーンがあった
物語の中では電話しなくなってからも期間に含めて8ヶ月、電話だけの関係が続いていた
それだけ続けば、仲の良さは折り紙付き。
そして学が願かけたこと、学だからこそその願掛けが出来たわけで、学の職業らしいなと思った

 

ラストの『ナハトムジーク』では耳が悪い少年が成長してある姿になって、ボクシングのチャンピオン小野の前に現れるシーンが好きだ。手話で大丈夫と肩を叩くところも、板を真っ二つに割ってみせるところも、あの時小野が少年に言ってみせたことの再現だったからだ。

 

他にも離婚危機のある夫婦が銀行の通帳を使って仲直りやいい関係に向かっていく話など
いい話もあるのでおすすめです

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